こんにちは、労務女子なおです。
仕事中や通勤中のけが・病気などに備える制度が、労災保険です。労災保険法に基づき、治療や休業、障害が残った場合などに必要な給付が行われます。
この記事では、労災保険法の基本、労災保険の対象となる災害や主な給付内容、人事労務担当者が押さえておきたい対応を解説します。
労災保険法と労災保険
労災保険の正式名称は「労働者災害補償保険」です。労働者災害補償保険法(労災保険法)に基づき、仕事や通勤が原因で労働者がけがをしたり、病気になったり、障害が残ったり、亡くなったりした場合に、労働者本人や遺族に保険給付を行います。
労災保険は、原則として労働者を1人でも雇用する事業に適用されます。労働者に当たる場合、正社員だけでなく、パートやアルバイトなども対象です。保険料は全額事業主が負担し、全労働者に支払った賃金総額に業種別の労災保険率を掛けて算定します。たとえば、年間賃金総額が1,000万円で料率が3/1,000なら、会社が負担する保険料は年3万円です。実際の料率は事業の種類によって異なります(令和8年度の労災保険率)。労働者が保険料を負担する雇用保険とは異なります。事業主や役員など、労働者に当たらない人は原則として対象外ですが、一定の要件のもとで特別加入できる制度があります。
社会保険・労働保険の全体像については、以下の記事で解説しています。
➡【社会保険】医療、介護、年金、労災、雇用?概要をわかりやすく解説
労災保険の対象となる災害
労災保険の対象となる災害は、主に業務災害、通勤災害、複数業務要因災害の3つです。仕事や通勤に関係する事故でも、具体的な状況を踏まえて労働基準監督署が判断します。
業務災害
業務災害とは、業務が原因となって発生したけがや病気などをいいます。仕事中に起きたことだけで直ちに業務災害となるわけではなく、業務と傷病との間に関連性があるかが判断されます。
たとえば、業務中の機械操作によるけがや、業務上の負荷が原因となった脳・心臓疾患、精神障害などが問題となることがあります。判断は傷病の種類や業務の内容、発症までの経緯などに応じて行われます。
通勤災害
通勤災害とは、労働者が就業に関して、住居と就業場所の間を合理的な経路・方法で移動する際に被った災害などをいいます。通勤の途中で経路を外れたり、移動を中断したりした場合、その間やその後の移動が通勤と認められないことがあります。ただし、日用品の購入など、日常生活上必要な行為のための最小限の逸脱・中断には例外があります。
通勤災害の要件や手続きについては、以下の記事も参考にしてください。
➡【通勤災害】労災認定?申請手続き?概要をわかりやすく解説
複数業務要因災害
複数業務要因災害は、複数の勤務先で働く人について、個々の勤務先の業務だけでは労災と認められない場合でも、複数の勤務先での業務上の負荷を総合的に評価した結果、労災と認められる災害です。副業・兼業をする人が増える中で、労働時間やストレスなどを複数の勤務先にまたがって評価する仕組みが設けられています。
労災保険の主な給付
労災保険では、傷病の治療や休業、障害、死亡など、状況に応じて次のような給付が行われます。給付名は業務災害・通勤災害などによって異なります。
| 給付の種類 | 支給される主な場面 |
|---|---|
| 療養(補償)等給付 | 労災によるけがや病気の治療を受けるとき。指定医療機関では必要な療養を受けられ、指定外の医療機関では療養費が支給されます。 |
| 休業(補償)等給付 | 療養のため働けず、賃金を受けられないとき。要件を満たす場合、原則として休業4日目から支給されます。 |
| 障害(補償)等給付 | 傷病が治った後に一定の障害が残ったとき。障害等級に応じて年金または一時金が支給されます。 |
| 傷病(補償)等年金 | 療養開始後1年6か月を経過しても傷病が治らず、一定の状態にあるとき。 |
| 遺族(補償)等給付 | 労働者が労災により亡くなったとき。遺族に年金または一時金が支給されます。 |
| 葬祭料等(葬祭給付) | 労働者が労災により亡くなり、葬祭を行うとき。 |
| 介護(補償)等給付 | 障害(補償)等年金または傷病(補償)等年金を受ける人が、一定の障害状態にあり介護を受けているとき。 |
このほか、一定の要件に該当する場合の二次健康診断等給付もあります。給付の支給要件や金額は種類ごとに異なるため、詳しくは厚生労働省の労災保険給付の概要を確認してください。
休業時の給付
休業(補償)等給付は、労災による傷病の療養のため働けず、賃金を受けられないなどの要件を満たした場合に支給されます。原則として休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の60%相当額が支給されます。また、休業特別支給金として給付基礎日額の20%相当額が支給されるため、合計では給付基礎日額の80%相当額となります。
休業初日から3日目までの待期期間は、業務災害の場合、労働基準法に基づき事業主が平均賃金の60%以上の休業補償を行います。通勤災害の場合には、この労働基準法上の休業補償義務はありません。
休業手当は、会社の都合で休業させた場合に労働基準法第26条に基づき支払うものです。労災による休業時の休業補償とは、支給される場面や根拠が異なります。
労災が発生したときの会社の対応
労災が発生したときは、まず被災した労働者の安全を確保し、必要な医療につなげます。業務や通勤が原因のけが・病気について健康保険を使うことはできないため、医療機関に労災であることを伝え、請求手続きを確認します。
労災保険給付を受けられるかどうかを会社が決めるわけではありません。労働者本人が請求し、労働基準監督署長が支給・不支給を判断します。会社が労災と認めない場合や事業主証明をしない場合でも、労働者は請求できます。会社は、事故状況や勤務記録など必要な情報を整理し、請求手続きに協力することが大切です。
また、労働者死傷病報告など、保険給付の請求とは別に事業主が行う報告もあります。休業日数や事故の状況に応じて必要な手続きが異なるため、所轄の労働基準監督署や厚生労働省の案内を確認します。原因を調査し、設備や作業手順、教育、勤務管理などを見直して、同様の事故を防ぐ対応につなげましょう。
業務上の災害に関する労働基準法上の補償義務については、以下の記事で解説しています。
➡【労働基準法】日本国憲法、民法との関係?概要をわかりやすく解説
労災保険給付の請求期限
労災保険の給付を請求する権利には時効があります。たとえば、療養(補償)等給付や休業(補償)等給付は原則2年、遺族(補償)等年金は5年です。起算日は給付によって異なるため、事故から時間が経っている場合も、早めに労働基準監督署へ相談しましょう。
給付ごとの時効は、厚生労働省の労災保険に関するQ&Aで確認できます。
おわりに
労災保険法は、仕事や通勤が原因でけがや病気になった労働者やその遺族を保護するための法律です。労災保険では治療、休業、障害、死亡などの状況に応じた給付が行われ、労災に当たるかどうかは労働基準監督署が判断します。人事労務担当者は、労災発生時の請求手続きだけでなく、労働者が必要な治療を受けられるようにすること、事業主として必要な報告を行うこと、再発防止に取り組むことが求められます。給付の要件や手続きは個別の状況によって異なるため、厚生労働省や労働基準監督署の最新情報を確認しながら対応しましょう。
労災保険法を含む労働・社会保険の知識を資格学習を通じて整理したい方は、以下の記事も参考にしてください。
➡【労務の資格・検定】社労士・衛生管理者などの特徴と選び方
労働法の基本を本で学びたい方は、おすすめの書籍を紹介したこちらの記事もご覧ください。
➡【人事労務おすすめ本】労働法の基本を学ぶには?おすすめ厳選8冊を紹介
【参考】
・e-Gov法令検索 労働者災害補償保険法
・厚生労働省 労災保険制度の概要、給付の請求手続等
・厚生労働省 労災保険に関するQ&A