【手話施策推進法】企業に新たな義務はある?目的・概要を解説

手話施策推進法 雇用・両立支援

こんにちは、労務女子なおです。

2025年6月に「手話施策推進法」が施行されました。この法律は、手話を使う人が手話を学び、使える環境を整えるため、国や自治体が進める施策を定めたものです。手話施策推進法によって、企業に手話通訳者の配置などが一律に義務づけられたわけではありません。ただし、雇用の場では、別の法律に基づく合理的配慮が必要となる場合があります。

手話施策推進法の概要

正式名称は「手話に関する施策の推進に関する法律」です。2025年6月18日に成立し、同月25日に公布・施行されました。手話を学び、使う機会を広げることに加え、手話文化の保存・継承・発展や、国民の理解を深める施策を総合的に進めることを目的としています。同法では、手話を必要とする人や使う人の意思を尊重すること、手話文化を大切にすることなどを基本理念に掲げています。国や地方公共団体の障害者計画も、法律の趣旨を踏まえて策定・変更することとされています。

主な施策は次のとおりです。

分野主な内容
手話を学び、使う機会手話を必要とする子どもが、希望に応じて手話を学べる機会を設けることなど
学校・大学手話による教育や、手話を使う人への教育上の配慮を進めること
職場手話を使う人を雇用する、または雇用しようとする事業主の職場環境整備の取組が進むよう、行政が情報提供・相談・助言などを行うこと
地域・災害時地域で手話を使って生活できる環境や、災害時に手話で必要な情報を得られる環境を整えること
手話文化・理解促進手話文化の保存・継承・発展、手話への理解や関心を深めるための広報・啓発
人材・技術手話通訳者などの人材確保・養成・処遇、調査研究やデジタル技術の活用

また、9月23日を「手話の日」と定めています。

手話施策推進法ができた背景

手話施策推進法ができるまでは、段階的な経緯があります。2011年の障害者基本法改正で「言語(手話を含む。)」と明記され、2013年には鳥取県で全国初の手話言語条例が制定されました。その後、自治体の取組が全国に広がり、当事者団体による法制定運動も2010年から続いていました。こうした経緯を経て、同法は2025年6月18日に全会一致で成立し、同月25日に公布・施行されました。成立した2025年は、東京デフリンピックの開催を控えた時期でもありました。

障害者基本法の目的や障害者の定義については、以下の記事で解説しています。
➡【障害者基本法】目的や障害者の定義は?概要をわかりやすく解説

手話施策推進法と企業の義務

手話施策推進法には、企業に手話通訳者を必ず配置するなどの新しい一律の義務はありません。第9条が定めているのは、国や地方公共団体が、手話を使う人を雇用する、または雇用しようとする事業主の取組を促すために、情報提供・相談・助言などを行うことです。法律の中心は、行政の責務と施策の方向性を定めることにあります。

職場での合理的配慮

手話施策推進法とは別に、雇用分野では「障害者雇用促進法」により、事業主に障害者への差別禁止や、過重な負担とならない範囲での合理的配慮の提供が求められています。雇用分野での差別禁止や合理的配慮については、以下の記事で解説しています。
➡【障害者雇用促進法】雇用義務、法定雇用率とは?概要をわかりやすく解説

聴覚障害のある人が働く場合でも、必要な配慮は一人ひとり異なります。手話を使う人もいれば、筆談や文字による情報提供、補聴器などを使う人もいます。会社側で方法を決めつけず、本人と話し合い、希望するコミュニケーション方法や、仕事上困っていることを確認することが大切です。たとえば、会議や研修での手話通訳・文字通訳、資料の事前共有、緊急時の情報伝達方法などが考えられます。本人の希望を踏まえて、関係者に必要な情報を共有するなど、プライバシーへの配慮も大切です。厚生労働省の事例集にも、手話通訳や筆談、PCを使った文字でのやり取りなどが紹介されています。

おわりに

手話施策推進法は、手話を言語・文化として尊重し、習得や使用を支える施策を国や自治体が進めるための法律です。企業に新たな一律の義務を課すものではありませんが、職場では別途、本人に合った合理的配慮を検討することが求められます。

人事労務担当者の方で、障害者雇用に限らず労働法の基本を学びたい場合は、こちらの記事でおすすめの書籍を紹介しています。
➡【人事労務おすすめ本】労働法の基本を学ぶには?おすすめ厳選8冊を紹介

【参考】
・手話に関する施策の推進に関する法律(e-Gov法令検索)
・手話に関する施策の推進(内閣府)
・第217回国会 参議院本会議 会議録(国会会議録検索システム)
・手話言語法制定運動 15年間の記録(全日本ろうあ連盟)
・雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮(厚生労働省)
・合理的配慮指針事例集(厚生労働省)

最後に、手話施策推進法の背景や、手話を言語・文化として捉える考え方まで知りたい方には、全日本ろうあ連盟編『手話言語白書【第二版】』も参考になります。

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