こんにちは、労務女子なおです。
就職活動や採用活動では、「内々定」と「内定」という言葉がよく使われます。一般的には、内々定は企業が採用する意向を非公式に伝えるもの、内定は正式に採用を決定して通知するものと理解されています。ただし、法律上、この2つの違いが明確に定められているわけではありません。大切なのは名称ではなく、企業と応募者の間で労働契約が成立しているかどうかです。
この記事では、内定と内々定の違い、法的な扱い、人事が注意したいポイントを分かりやすく解説します。
内定と内々定の違い
内定と内々定の一般的な違いは、次のように整理できます。
| 内々定 | 内定 | |
|---|---|---|
| 一般的な意味 | 採用する意向を非公式に伝えること | 採用することを正式に決定し、通知すること |
| 通知方法 | 口頭、電話、メールなどの場合もある | 内定通知書などの書面で通知することが多い |
| 労働契約 | 成立していないことが多い | 成立していると判断されることが多い |
| 企業による取消し | 内定より広く認められる可能性がある | 自由に取り消すことはできない |
ただし、これはあくまで一般的な整理です。「内々定」という名称でも労働契約が成立している場合があり、「内定」と伝えれば必ず成立するとも限りません。実際の通知内容やその後のやり取りによって判断されます。
内々定とは
内々定とは、企業が応募者に対し、正式な内定に先立って採用する意向を伝えることをいいます。例えば、最終面接後に「採用する方向で進めています」「後日、正式な内定通知書を送付します」と伝えるケースです。新卒採用では、正式な内定通知の前に、口頭やメールで内々定を伝えることがあります。
一般的な内々定の段階では、まだ労働契約が成立していないことが多いと考えられます。ただし、企業が採用を確定的に通知し、応募者も承諾している場合には、名称が内々定であっても、労働契約が成立していると判断される可能性があります。
内定とは
内定とは、一般的には、企業が応募者を採用することを正式に決定し、その旨を通知することをいいます。企業が内定を通知し、応募者が承諾した場合には、入社予定日を就労開始日とする労働契約が成立していると判断されることがあります。
採用内定の法的な性質について、判例では「始期付解約権留保付労働契約」が成立すると判断された例があります。
- 始期付:入社予定日から働き始める
- 解約権留保付:一定の理由がある場合には、企業が契約を解約できる
- 労働契約:入社前でも、企業と内定者との間では契約が成立している
つまり、実際に働き始めるのは入社日からですが、内定の段階ですでに労働契約が成立している場合があるということです。この点が、単なる採用予定や一般的な内々定との大きな違いです。
なお、内定は入社前の段階、試用期間は入社後に適性などを確認する期間という違いがあります。試用期間の法的な位置づけや本採用拒否については、以下の記事で詳しく解説しています。
➡【試用期間とは】延長・解雇・本採用拒否の注意点を解説
内定・内々定を扱うときに人事が注意したいこと
名称ではなく、実際のやり取りで判断される
労働契約が成立しているかどうかは、「内定」「内々定」という名称だけでは決まりません。具体的には、次のような事情が判断材料になります。
- 企業が採用することを確定的に伝えているか
- 入社予定日や労働条件が決まっているか
- 内定通知書や労働条件通知書を交付しているか
- 応募者が内定承諾書などを提出しているか
- その後に実質的な選考や社内承認が残っているか
例えば、「内々定」と伝えていても、入社日や労働条件を示し、応募者から承諾を得ている場合には、実質的には内定と判断される可能性があります。
採用が確定していない段階では断定的に伝えない
最終承認や必要な選考が終わっていない段階では、「採用が決まりました」「就職活動を終えて大丈夫です」といった表現は避けましょう。採用が確定していない場合には、今後必要となる手続きや選考を明確に伝えます。また、担当者によって説明が異ならないよう、内々定を伝える時期や正式な内定とする手続きを社内で整理しておくことも大切です。
正式な内定では労働条件を明確にする
正式に内定を通知する際には、入社予定日、就業場所、業務内容、賃金などの労働条件を明確に示します。募集時に示した労働条件から変更がある場合には、変更内容を明示し、応募者に丁寧に説明する必要があります。内定通知書、労働条件通知書、内定承諾書などの役割も社内で整理しておきましょう。
内定・内々定の取消しは慎重に判断する
内々定の段階で労働契約が成立していなければ、内定取消しと同じ法的な制限を受けない可能性があります。しかし、企業が採用を確実に期待させ、応募者が他社の選考を辞退した後に、合理的な説明なく内々定を取り消した場合には、企業の責任が問題になることがあります。
一方、労働契約が成立している内定の取消しは、契約の解約にあたります。企業が自由に取り消せるものではなく、取消しの理由に客観的な合理性があり、社会通念上相当と認められる必要があります。取消しを検討するときは、それまでの通知内容や本人とのやり取りを確認し、必要に応じて専門家へ相談しましょう。
内定取消しの判断基準や進め方については、以下の記事で詳しく解説しています。
➡【内定取消しとは】認められるケース・進め方・注意点を解説
採用に関する記録を残す
内定や内々定を伝えた日時、通知内容、提示した労働条件、応募者の回答などは記録に残しておきましょう。口頭だけでやり取りすると、後から企業と応募者の認識が食い違う可能性があります。特に重要な内容は、書面やメールでも確認できるようにしておくことが大切です。
応募者は内定・内々定を辞退できるのか
応募者は、内々定だけでなく、原則として内定も辞退できます。内定承諾書を提出していても、それだけで入社を強制することはできません。
企業は内定辞退の理由を無理に問い詰めたり、強く引き止めたりせず、本人の意思を確認して必要な手続きを案内します。また、採用人数に余裕を持たせる、内定後も定期的に連絡を取るなど、一定の辞退が生じることを想定して採用計画を立てることも大切です。
おわりに
内々定は採用する意向を非公式に伝えるもの、内定は採用を正式に決定して通知するものとして使われるのが一般的です。ただし、法律上は名称だけで明確に区別されているわけではありません。重要なのは、企業が採用を確定的に伝え、応募者が承諾したことによって、労働契約が成立しているかどうかです。人事担当者は、内定と内々定を社内で明確に使い分け、応募者に誤解を与えない説明を心がけましょう。採用に関する一つひとつの言葉や対応が、応募者の進路選択に影響することを意識し、丁寧にコミュニケーションを取ることが大切です。
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