こんにちは、労務女子なおです。
労務の仕事では、法律や制度について、すぐに答えられない問題に直面することがあります。労働法令は幅広く、法改正もあるため、すべてを暗記しておくことは現実的ではありません。大切なのは、分からないことがあったときに必要な情報を調べ、実務上の判断につなげられることです。
この記事では、労務担当者が身につけたい「調べる力」について、4つのステップで解説します。
労務担当者に必要な「調べる力」とは
労務における調べる力とは、単にインターネットで答えを探す力だけではありません。
- 何を確認すべきか整理する
- 信頼できる情報を見つける
- 自社の状況に当てはめて考える
- 判断の根拠を説明できるようにする
実務で使える「調べる力」は、これらすべてを行えることが望ましいです。
労務実務における調べ方の4ステップ
調べる論点の整理
最初に、何を確認したいのかを具体的な問いにします。たとえば、「残業について調べる」とするよりも、残業に関して何を調べたいのかを整理する方が効果的です。
- どの時間が労働時間に当たるのか
- 割増賃金の支払いが必要か
- 固定残業代を超えた分の支払いが必要か
このように分解すると、確認すべき法律や論点が見えやすくなります。社員から相談を受けた場合も、その言葉をそのまま検索するのではなく、事実関係を整理して「何を判断する必要があるのか」を明確にすることが第一歩です。
信頼できる情報源の確認
調べる論点が整理できたら、信頼性の高い情報源を確認します。インターネット上には多くの解説がありますが、検索結果の上位に表示されたページが、必ずしも正確であるとは限りません。情報が古かったり、個別の条件が省略されていたりすることもあります。
労務について調べるときは、次のような情報源を使い分けましょう。
法令
法律の条文を確認する場合は、e-Gov法令検索を利用できます。労働基準法、労働契約法、育児・介護休業法などの現在の条文を確認できるほか、施行日や改正内容を確認できる場合もあります。
法令は調査の基本となる情報ですが、条文だけでは具体的な取扱いが分かりにくいこともあります。その場合は、行政資料や通達、裁判例などもあわせて確認します。
厚生労働省などの行政資料
厚生労働省や都道府県労働局のウェブサイトには、制度の解説、ガイドライン、Q&A、パンフレットなどが掲載されています。法改正の概要や実務上の手続きについては、法律の条文よりも行政資料の方が分かりやすいことがあります。まず制度の全体像をつかみたいときにも便利です。ただし、一般向けのパンフレットやQ&Aは、複雑な条件を省略して説明している場合があります。個別の事案を判断するときは、それだけで結論を出さず、根拠となる法令や詳しい資料まで確認しましょう。
通達
通達は、行政機関が法令の解釈や運用について示したものです。たとえば、ある時間が労働時間に当たるかなど、条文だけでは具体的な取扱いが分かりにくい問題を調べる際に参考になります。ただし、通達は法律そのものではありません。また、発出後の法改正によって取扱いが変わっていることもあるため、通達の日付や現在の制度との関係も確認する必要があります。
裁判例
法律の条文だけでは判断しにくい問題について、裁判所がどのような事情を考慮したのかを知るために、裁判例が参考になります。裁判例は、裁判所の裁判例検索などで調べることができます。ただし、裁判例の結論だけを見て、自社のケースにもそのまま当てはめるのは適切ではありません。どのような事実関係があり、何が判断を分けたのかまで確認することが大切です。また、裁判所の判断には、最高裁判所の判例から個別の事案に関する下級審の裁判例まであります。どの裁判所の、いつの判断なのかも確認しましょう。
専門書や専門家による解説
専門書や、弁護士・社会保険労務士などによる解説は、法令、通達、裁判例を整理して理解する際に役立ちます。特に、複数の論点が関係する問題や、条文を読んでも意味が分かりにくい問題については、専門的な解説から調べ始める方が効率的な場合もあります。ただし、書籍や記事の発行後に法改正が行われている可能性があります。発行時期や更新日を確認し、最終的には最新の法令や行政資料と照らし合わせましょう。
労働法を学ぶ際におすすめの書籍は、以下の記事で紹介しています。
➡【人事労務おすすめ本】労働法の基本を学ぶには?おすすめ厳選8冊を紹介
分かりやすい解説から根拠へさかのぼる
実務では、最初から難しい法令や裁判例を読み込む必要はありません。まず行政のパンフレットや専門家の解説で全体像をつかみ、そこから法令、通達、裁判例などの根拠へさかのぼると、効率的に調べられます。検索するときも、社員が使った言葉だけでなく、法律や実務で使われる言葉に置き換えることがポイントです。たとえば、「異動」で情報が見つからない場合は、「配置転換」「配転命令」などの言葉で検索すると、より専門的な情報にたどり着きやすくなります。
生成AIも、確認すべき論点の洗い出し、検索語の検討、調べた内容の整理などに活用できます。ただし、回答には誤りや古い情報が含まれる可能性があるため、示された法令や裁判例が実在するかを含め、必ず元の情報を確認しましょう。また、個人情報や健康情報など、機密性の高い情報を入力しないことにも注意が必要です。
自社の事案への当てはめる
一般的なルールが分かっても、そのまま自社の事案に当てはまるとは限りません。実務では、次のような点も確認します。
- 雇用形態や労働条件
- 本人の勤務状況やこれまでの経緯
- 就業規則や社内規程
- 雇用契約書や労使協定
- 過去の社内運用
法律が定めているのは最低限の基準であり、会社が法律よりも有利な条件を定めていることもあります。また、解雇、懲戒処分、雇止めなどは、個別の事実関係によって判断が変わります。「一般的なルール」と「今回の事案」を分け、どの点が同じで、どの点が異なるのかを考えることが重要です。
従業員への影響が大きい問題や、法令の解釈が難しい問題については、労務担当者だけで結論を出す必要はありません。事実関係や確認した資料、判断に迷っている点を整理したうえで、必要に応じて弁護士や社会保険労務士などへ相談しましょう。
判断根拠の整理
調べた内容は、その場限りで終わりにせず、判断の根拠を整理し、記録しておくとよいでしょう。
- 確認した事実
- 参照した法令や資料
- 検討した論点
- 会社としての判断
- 回答日や資料の確認日
整理・記録しておくことで、後にトラブルへ発展した場合に判断の経緯を確認できるほか、同様の相談への対応や、担当者が変わった際の引継ぎにも活用できます。
おわりに
労務担当者に必要なのは、すべての法律や制度を暗記することではありません。分からないことがあったときに、論点を整理し、信頼できる情報を確認し、自社の事案に当てはめて考えることが重要です。日々の実務の中で調べた経験を積み重ねることで、必要な情報へたどり着くスピードも、判断の精度も少しずつ高まっていきます。
労働法をどのような順序で学べばよいか知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
➡【労働法の学び方】人事担当者は何から勉強する?おすすめの順番を解説