こんにちは、労務女子なおです。
人事労務の仕事では、労働時間、休暇、休職、退職など、さまざまな場面で労働法の知識が必要になります。一方で、労働法に関係する法律は多く、何から勉強すればよいのか迷う人もいるでしょう。
人事担当者が労働法を学ぶときは、最初から細かな条文や判例まで覚えようとする必要はありません。まず全体像をつかみ、労働基準法や労働契約法の基本を押さえたうえで、実務に関係する分野へと知識を広げていくのがおすすめです。
本記事では、人事担当者が労働法を学ぶときの順番と、学んだ知識を実務につなげるためのポイントを解説します。
そもそも労働法とは
「労働法」という名前の法律が一つ存在するわけではありません。労働法とは、労働者と会社との関係について定める、さまざまな法律の総称です。代表的なものとして、次のような法律があります。
- 労働基準法
- 労働契約法
- 労働組合法
- 最低賃金法
- 労働安全衛生法
- 男女雇用機会均等法
- 育児・介護休業法
- パートタイム・有期雇用労働法
- 労働者派遣法
人事労務の仕事には、採用、労働時間管理、賃金、休職、異動、懲戒、退職など、幅広い業務があります。そのため、すべての法律を一つずつ覚えようとするのではなく、人事実務の中でそれぞれの法律がどのように関係するのかを理解することが大切です。
人事担当者が労働法を学ぶおすすめの順番
人事担当者が労働法を学ぶ場合、次の順番で進めるのがおすすめです。
| ステップ | 学ぶ内容 | 目指す状態 |
|---|---|---|
| 1 | 労働法の全体像 | どのような法律があるか分かる |
| 2 | 労働基準法・労働契約法 | 人事労務に必要な基本ルールが分かる |
| 3 | 担当業務に関係する分野 | 学んだ知識を実務で使える |
| 4 | 判例・行政資料・専門書 | 個別の事案をより深く検討できる |
必ずしも、すべてのステップを完全に終えてから次へ進む必要はありません。現在の知識や実務経験に合ったステップから学び、実際の業務と行き来しながら理解を深めていくことが重要です。
ステップ1.労働法の全体像をつかむ
最初に取り組みたいのは、労働法の全体像を把握することです。この段階では、細かな条文や例外まで覚える必要はありません。まずは、次のような基本的な関係を理解できれば十分です。
- 労働条件の最低基準には、主に労働基準法が関係する
- 会社と従業員との労働契約には、労働契約法が関係する
- 育児休業や介護休業には、育児・介護休業法が関係する
- 職場の安全や健康管理には、労働安全衛生法が関係する
- 労働組合との関係には、労働組合法が関係する
最初から分厚い専門書を読むよりも、初学者向けの入門書で全体像をつかむ方が理解しやすいでしょう。「このような問題には、どの法律が関係するのか」が分かる状態を目指します。
ステップ2.労働基準法と労働契約法の基本を学ぶ
全体像を把握した後は、労働基準法と労働契約法の基本を学びます。
労働基準法は、労働時間、休日、休暇、賃金など、人事担当者が日常的に取り扱う労働条件の最低基準を定めています。特に、次の分野は優先して学んでおきたいところです。
- 労働条件の明示
- 賃金の支払い
- 労働時間、休憩、休日
- 時間外労働と割増賃金
- 年次有給休暇
- 就業規則
- 解雇
一方、労働契約法は、会社と従業員との労働契約に関する基本的なルールを定めています。人事実務では、次のような場面で労働契約法の考え方が重要になります。
- 労働契約の成立
- 就業規則と労働契約の関係
- 労働条件の変更
- 懲戒
- 有期労働契約
- 雇止め
- 解雇
この段階でも、すべての条文を暗記する必要はありません。まずは原則となるルールを理解し、どのような場面で問題になるのかを把握しましょう。
ステップ3.担当業務に関係する分野を学ぶ
基本的な法律を理解した後は、自分の担当業務に関係する分野へと学習範囲を広げていきます。例えば、給与計算や勤怠管理を担当する場合は、労働時間、割増賃金、社会保険、労働保険などの知識が必要です。採用を担当する場合は、募集・採用に関するルール、労働条件の明示、内定、試用期間、有期労働契約などを優先して学ぶとよいでしょう。労務対応を担当する場合は、休職、復職、ハラスメント、懲戒、退職、解雇などについて、より深い理解が求められます。
また、次のように、従業員の入社から退職までの流れに沿って整理する方法もおすすめです。
採用・入社
- 募集と採用選考
- 内定
- 労働条件の明示
- 試用期間
- 雇用契約書
在職中
- 労働時間と休暇
- 賃金と賞与
- 配置転換と出向
- 育児・介護との両立支援
- ハラスメント
- 休職と復職
- 懲戒処分
退職
- 自己都合退職
- 定年退職
- 雇止め
- 退職勧奨
- 解雇
実際の仕事に関係するテーマであれば、自分が経験した事例と結びつけられるため、知識も定着しやすくなります。
自社の就業規則も教材として活用する
担当業務に関係する分野を学ぶときは、自社の就業規則も身近な教材になります。労働時間、年次有給休暇、休職、懲戒、退職などについて、法律上のルールが自社の就業規則にどのように反映されているかを確認してみましょう。ただし、就業規則に書かれているからといって、その内容や実際の運用が必ず適切とは限りません。「自社ではどうなっているか」と「法律上はどのように考えるか」の両方を確認する習慣が大切です。その際、厚生労働省のモデル就業規則を参照することも有用です。
ステップ4.判例や行政資料、専門書で理解を深める
人事労務の実務では、法律の条文を読んだだけでは結論が分からないことがあります。例えば、ある配置転換が認められるのか、懲戒処分が重すぎないか、解雇に合理的な理由があるのかといった問題は、個別の事情によって判断が変わります。
基本的な法律を理解した後は、代表的な判例や厚生労働省などの行政資料、実務書を通じて、判断の考え方を学んでいきましょう。判例を学ぶときは、結論だけを覚えるのではなく、次の点に注目することが大切です。
- どのような事実があったのか
- 何が争点になったのか
- どのような事情が判断に影響したのか
- 自社の事例と何が同じで、何が異なるのか
この段階まで進むと、法律上のルールを知るだけでなく、個別の事案をどのように検討すべきかが少しずつ見えるようになります。
資格や書籍を学習にどう活用するか
労働法を学ぶ方法は、日々の実務だけではありません。資格の勉強や書籍も、目的に応じて活用できます。
資格の勉強を活用する
労働法を体系的に学ぶために、資格の勉強を活用する方法もあります。例えば、社会保険労務士の試験では、労働法や社会保険に関する幅広い知識を体系的に学べます。また、安全衛生に関する業務を担当している場合には、衛生管理者の勉強が実務に直接役立つこともあるでしょう。ただし、資格の取得だけを目的にすることは、必ずしもおすすめしません。試験に合格するための知識と、実際の人事労務の場面で求められる判断や対応には、違いがあるためです。担当業務に役立つ、体系的に知識を整理できる、学習を続けるモチベーションになるなど、自分にとっての活用方法を理解したうえで、資格取得を検討するのも一つの選択肢です。
自分のレベルに合った本を選ぶ
労働法を初めて学ぶ場合は、まず全体像を分かりやすく説明した入門書から始めるのがおすすめです。その後、自分の実務経験や担当業務に応じて、基本書や専門的な実務書へと進むとよいでしょう。難しすぎる本を選ぶと、内容を理解できないまま学習が止まってしまうことがあります。
なお、個人的には、すでに実務経験がある人であっても、入門書を読むことは、体系的に頭が整理されたり、新たな気付きを得られたり、有益なことが多いと感じています。
労働法を学ぶための本については、以下の記事で、初心者向けと経験者向けに分けて紹介しています。
➡【人事労務おすすめ本】労働法の基本を学ぶには?おすすめ厳選8冊を紹介
おわりに
人事担当者が労働法を学ぶときは、まず全体像をつかみ、労働基準法と労働契約法の基本を押さえたうえで、担当業務に関係する分野へと知識を広げるのがおすすめです。ただし、すべてを学び終えてから実務に移るわけではありません。自分のレベルに合ったステップと実務を行き来し、分からないことを調べ、必要に応じて基本へ戻る。その繰り返しによって、労働法の知識は人事としての判断力につながっていきます。さらに、労働法を土台として、給与、社会保険、安全衛生、人材マネジメントなどとのつながりが見えるようになると、人事労務の仕事をより広い視点から考えられるようになります。