こんにちは、労務女子のなおです。
企業によって、事業の内容も、歴史も、働いている人も、組織文化も異なります。そのため、すべての企業に当てはまる「正しい人事制度」や「理想の組織」があるわけではありません。一方で、世の中には、独自の考え方で人事制度や組織をつくり、成果につなげている企業が数多くあります。
そうした企業の事例を知ることは、その仕組みをそのまま自社に取り入れるためではなく、「なぜこの会社ではこの仕組みが機能しているのか」「自社だったらどうだろうか」と考えるきっかけになります。私自身も、さまざまな企業の人事や組織について書かれた本を読むことで、「こんな考え方もあるのか」と視野が広がったり、自社の人事について改めて考えさせられたりすることがありました。
今回は、これまで読んだ本の中から、特徴的な企業の人事・組織について知り、自社の人事や組織づくりを考えるうえで参考になった5冊を紹介します。今回紹介するのは、Google、Netflix、京セラといった特定企業の人事・組織について書かれた本に加え、複数の優れた企業を分析し、その共通点について考察した本です。
人事や組織に「これが唯一の正解」というものがあるわけではありません。むしろ、さまざまな企業の異なる考え方に触れることで、自社にとってどのような人事・組織が望ましいのかを考える視点を広げるという読み方がおすすめです。
| 書籍 | 特徴 | こんな視点で読める |
|---|---|---|
| ワーク・ルールズ! | Googleの人事 | データや試行錯誤を通じて、人事の「当たり前」を問い直す |
| NO RULES 世界一「自由」な会社、NETFLIX | Netflixの組織・人材思想 | 自由と責任を重視した組織とはどのようなものか |
| アメーバ経営 | 京セラの組織運営 | 一人ひとりの経営者意識や当事者意識をどう高めるか |
| ビジョナリー・カンパニー | 海外企業の比較研究 | 長期にわたり優れた企業にはどのような共通点があるのか |
| 日本の優秀企業研究 | 日本企業の比較研究 | 日本の優れた企業の経営や組織にはどのような特徴があるのか |
企業の人事・組織から学ぶために読んでよかった本 5冊
ワーク・ルールズ! ラズロ・ボック(著)
Googleで人事部門のトップを務めたラズロ・ボックによる、Googleの人事について書かれた一冊です。
採用、評価、報酬、人材育成、組織文化など、人事に関する幅広いテーマについて、Googleがどのように考え、さまざまな仕組みをつくってきたのかが紹介されています。本書の面白さは、単なるGoogleのユニークな制度・運用の紹介ではなく、なぜそのような仕組みにしているのか、その背景にある考え方やデータまで紹介されていることにあります。
また、そこに至るまでの試行錯誤が随所に読み取れ、Googleという世界的な企業においても、その人事・組織は一朝一夕で築かれたものではないことを知ることができます。日々、自社のさまざまな人事課題に向き合っている人事担当者にとっては、少し勇気づけられる内容でもあると思います。
もちろん、Googleの人事制度をそのまま自社に取り入れることができるわけではありません。一方で、人事の仕事をしていると、これまでの慣習や経験を前提として制度を考えてしまうことがあります。本書を読むことで、人事施策について「本当にこのやり方がよいのか」と改めて問い直す視点を持つことができます。
特徴的な企業の人事の考え方に触れ、自社の人事を違った角度から考えてみたい人事担当者におすすめです。
NO RULES 世界一「自由」な会社、NETFLIX リード・ヘイスティングス、エリン・メイヤー(著)
Netflix共同創業者のリード・ヘイスティングスと、INSEAD教授のエリン・メイヤーによる、Netflixの特徴的な組織文化について書かれた一冊です。
Netflixでは、能力密度を高め、フィードバックを強化し、ルールを廃止することで自由と責任を与える、という一連のシステムが機能することで、優秀な人材が高速で意思決定し、成果を出し続ける組織をつくっています。まさに本のタイトル通り、休暇規程や経費承認など、一般的な企業では当たり前に存在するルールを極力減らし、超合理的な環境を構築することを本気で実践している稀有な企業と言え、その徹底ぶりには読んでいて脱帽させられます。
こうした人事・組織をそのまま真似する必要はなくとも、その背景にある、どのような人材を組織に集めるのか、社員をどこまで信頼するのか、自由と責任をどのように両立させるのかといった問いは、組織について考えるうえで非常に本質的なものです。
組織におけるルールや管理は何のために存在するのかを改めて考えるきっかけになる一冊です。
人事制度や組織の「当たり前」を一度疑って考えてみたい人事担当者におすすめです。
アメーバ経営 稲盛 和夫(著)
京セラ創業者の稲盛和夫氏による、京セラで実践されてきた「アメーバ経営」について書かれた一冊です。
アメーバ経営では、組織を「アメーバ」と呼ばれる小さな単位に分け、それぞれの組織が自らの目標や採算を意識しながら運営されます。経営や管理会計を学ぶための書籍としても紹介されることの多い本ですが、その土台となっている組織の考え方は、一人ひとりが経営に参加し、経営者意識を持つ組織をつくろうとしていることです。
人事として読むと、組織をどのような単位で設計するのか、社員にどこまで情報を共有するのか、社員の当事者意識をどのように高めていくのかなど、組織設計と人の意識の関係について考えるきっかけになります。前述のGoogleやNetflixとは企業文化も組織の考え方も大きく異なりますが、だからこそ比較して読むのも面白く、稲盛氏の経営や組織に対する考え方が色濃く表れた一冊として、興味深く読むことができます。
社員一人ひとりが主体的に組織に関わるための仕組みについて考えてみたい人事担当者におすすめです。
ビジョナリー・カンパニー ジェームズ・C・コリンズ、ジェリー・I・ポラス(著)
長期間にわたって優れた業績を残してきた企業を調査し、それらの企業に共通する特徴を分析した一冊です。
一つの企業を紹介する本とは異なり、複数の企業を比較することで、長く成長を続ける企業には何があるのかを考察しています。本書は、人事制度を取り上げた書籍ではありませんが、企業の基本理念や組織文化など、目の前の業績だけでは捉えにくい要素にも焦点が当てられており、人事担当者にとっても大変示唆に富んだ内容と言えます。
人事の仕事では、評価制度、報酬制度、人材育成など個別の施策について考えることが多くあります。一方で本書を読むと、そうした制度よりもさらに上位にある、「そもそもどのような会社・組織をつくりたいのか」という問いについて考えさせられます。
出版から時間が経っている本ではありますが、個別企業の施策を学ぶというより、企業や組織について長い時間軸で考えるための本として読むと、現在でも示唆に富んだ一冊だと思います。『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』など、その後もシリーズとして複数の書籍が出版されています。
人事制度だけではなく、企業文化や組織のあり方をより大きな視点から考えてみたい人事担当者におすすめです。
日本の優秀企業研究 新原 浩朗(著)
さまざまな日本企業を分析し、優れた企業に共通する特徴について考察した一冊です。
本書では、特定の経営手法や人事制度を紹介するというよりも、複数の日本企業の事例を紹介しながら、なぜその企業が長期にわたって競争力を維持できているのかを考えていきます。トヨタ自動車、花王、任天堂など、日本を代表するさまざまな企業の事例を通じて、それぞれの歴史や組織文化、意思決定のあり方を知ることができます。業種も歴史も異なる企業を横断して見ることで、「優れた企業とは何か」を考えられる点も本書の面白さです。
人事として読む場合にも、個別の人事制度だけを見るのではなく、経営の考え方、組織のあり方、人材が活躍する環境などを含めて企業全体を見る視点を持つきっかけになります。
日本企業の事例から、経営と人・組織の関係について考えてみたい人事担当者におすすめです。
おわりに
今回は、企業の人事・組織について考えるうえで参考になった5冊を紹介しました。
Google、Netflix、京セラでは、人や組織に対する考え方も、実際の仕組みも大きく異なります。また、『ビジョナリー・カンパニー』『日本の優秀企業研究』のように複数の企業を横断して見ることで、一つの企業の事例だけでは気づきにくい共通点について考えることもできます。こうした本を読む際に大切なのは、「この会社の制度を自社でも導入しよう」と考えることではなく、なぜその企業ではその仕組みが機能しているのかを考えることだと思います。
さまざまな企業の人事や組織に対する考え方に触れることで、自社にとってどのような人事・組織が望ましいのかを考える視点を広げるきっかけになればと思います。
企業の人事・組織以外のテーマについても、人事担当者におすすめの本を紹介しています。
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