【障害者優先調達推進法】対象・仕組みと企業の関わり方を解説

障害者優先調達推進法 雇用・両立支援

こんにちは、労務女子なおです。

企業で障害者雇用を担当していると、法定雇用率の達成や採用、職場での配慮など、自社の課題に目が向きやすくなります。一方で、社会には、企業による直接雇用に加え、商品を購入したり仕事を発注したりすることで、障害のある人の働く機会と自立を支える仕組みもあります。

「障害者優先調達推進法」は、国や自治体などが、障害者就労施設等からの購入・発注を進めるための法律です。民間企業に一律の優先調達義務を課すものではありませんが、こうした仕組みを知ることは、法定雇用率への対応にとどまらず、障害のある人の働く機会をどう支えるかという広い視点で、自社の障害者雇用を考えるきっかけになります。

今回は、法律の目的や対象、調達の仕組みと、企業が関わる際のポイントを整理します。

障害者優先調達推進法とは

障害者優先調達推進法の正式名称は、「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律」です。2012年6月に公布され、2013年4月1日に施行されました。国や地方公共団体、独立行政法人などが、障害者就労施設等から物品やサービスを優先的に調達することを推進し、障害のある人の自立を支えることを目的としています。

ここでいう「調達」は、物品を購入することだけでなく、清掃や印刷などのサービスを発注することも含みます。障害のある人が働く施設等では、仕事を受注できなければ、働く機会や収入を十分に確保することが難しくなります。そこで、公的機関の購入・発注を通じて需要を増やし、施設等の仕事や経営基盤を支えようというのが、この法律の考え方です。

対象となる「障害者就労施設等」

法律の対象は、障害福祉サービスを提供する事業所だけではありません。特例子会社や、在宅で仕事をする障害のある人なども含まれます。主な対象は、次のとおりです。

区分主な対象
障害福祉サービス事業所等就労移行支援事業所、就労継続支援事業所(A型・B型)、生活介護事業所、一定の障害者支援施設、地域活動支援センター、小規模作業所
企業の事業所特例子会社の事業所、一定の要件を満たす重度障害者多数雇用事業所
在宅での就業に関わる人・団体在宅就業障害者、在宅就業支援団体

「障害のある人が働いている企業」であれば、すべて法律上の対象になるわけではありません。公的機関が優先調達の実績として計上する場合には、調達先が対象に該当するかを確認する必要があります。また、複数の事業所への発注をあっせん・仲介する「共同受注窓口」もあります。発注先を探すときや、一つの事業所だけでは対応が難しい仕事を相談するときの窓口になります。

どのような物品・サービスを調達する?

対象となる仕事は、手作りの商品や食品の購入に限りません。日常の業務で利用するサービスも、発注の候補になります。

種類購入・発注の例
物品弁当、制服などの注文製造品、部品
印刷・事務関連印刷、データ入力、発送作業
施設管理関連清掃、クリーニング
作業の委託包装、組立

実際に対応できる内容は、事業所によって異なります。発注する側の必要な品質や数量、納期などを伝え、対応できるか相談することが大切です。企業でも、研修資料の印刷や発送、社内イベントで使う物品など、既存の購入・外注業務から検討すると、具体的な取組につなげやすいでしょう。

公的機関はどのように調達を進める?

法律では、国が基本方針を定め、各省庁や独立行政法人等が毎年度の調達方針を作成する仕組みを設けています。地方公共団体や地方独立行政法人も、毎年度、調達方針を作成します。調達方針は公表され、年度終了後には調達実績も公表されます。方針を作るだけでなく、実際の購入・発注につなげ、その結果を確認する仕組みです。

なお、「優先調達」といっても、価格や品質、契約手続きを問わず、必ず障害者就労施設等から購入するという意味ではありません。国や独立行政法人等には、予算の適正な使用に留意しながら、優先的な調達に努めることが求められています。

また、この法律には、公的機関が契約の競争参加資格を定める際に、障害者雇用の状況に配慮するなど、障害者の就業を促進するための措置に努めるという規定もあります。具体的な扱いは、各機関の入札・契約制度を確認する必要があります。

民間企業の関わり方と注意点

民間企業に一律の優先調達義務はない

この法律の中心は、国や自治体などの公的機関による調達の推進です。民間企業に、障害者就労施設等から一定額を購入することや、毎年度の調達方針・実績を公表することを一律に義務づけているわけではありません。

一方で、民間企業が自社の購入・発注先として障害者就労施設等を検討することは、障害のある人の働く機会を支える取組になります。人事だけで完結するテーマではないため、購買・総務部門などと連携し、「普段購入しているもの、外注している仕事の中に、相談できるものはあるか」という視点で考えると進めやすいでしょう。

発注しても、自社の障害者雇用率には算入されない

障害者就労施設等への発注と、自社の障害者雇用率は別の制度です。施設等から商品を購入したり、仕事を委託したりするだけでは、そこで働く人を自社で雇用していることにはならず、自社の実雇用率には算入されません。特例子会社制度などに基づく雇用率の算定とは区別する必要があります。また、発注すれば障害者雇用納付金が自動的に減額・免除される、という仕組みでもありません。

障害者雇用率制度など、企業が直接雇用する際の基本的な仕組みは、以下の記事で解説しています。
➡【障害者雇用促進法】雇用義務、法定雇用率とは?概要をわかりやすく解説

継続できる取引条件を話し合う

発注を進める際には、支援の趣旨に加えて、取引として無理なく続けられるかも大切です。例えば、次の点を事前に確認しておくと、認識の違いを減らせます。

  • 作業内容や成果物の仕様、品質の確認方法
  • 対応可能な数量と納期
  • 価格、納品方法、支払条件
  • 不具合や変更が生じたときの連絡先・対応方法
  • データ入力などを委託する場合の個人情報・機密情報の取扱い

最初から大きな仕事を任せることが難しければ、小規模な発注から始め、双方で対応状況を確認する方法も考えられます。「支援だから安くお願いする」「障害のある人が働く施設だから、この仕事は難しい」と決めつけず、相手の得意な業務や対応できる条件を聞くことが、継続的な取引につながります。

おわりに

障害者優先調達推進法は、公的機関の購入・発注を通じて、障害のある人の働く機会と自立を支える法律です。民間企業でも、普段の購入・外注業務を見直すことで、関われる場面があります。直接雇用の取組とともに、仕事の発注を通じた支援にも目を向けてみてはいかがでしょうか。

障害者雇用に限らず労働法を体系的に学びたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
➡【人事労務おすすめ本】労働法の基本を学ぶには?おすすめ厳選8冊を紹介

【参考】
・国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律(e-Gov法令検索)
・障害者優先調達推進法が施行されました(厚生労働省)
・国・地方公共団体等における障害者就労施設等からの役務の提供や物品等の調達について(厚生労働省)
・障害者優先調達推進法 啓発パンフレット(厚生労働省)

最後に、障害者雇用を自社の採用・雇用管理だけでなく、就労支援の仕組みも含めて理解したい方には、以下の入門書もおすすめです。

タイトルとURLをコピーしました