【変形労働時間制】フレックスタイム制との違い?概要をわかりやすく解説

変形労働時間制 勤務・働き方

こんにちは、IT企業で人事をしている労務女子なおです。
本記事では『変形労働時間制』に関して、3分程度で概観できるよう解説します。

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変形労働時間制とは

企業に勤める会社員の働き方を規定する勤務形態には、いくつかの種類があります。
その中でも『変形労働時間制』は、週や月や年単位など一定期間の労働時間を平均して調整する勤務形態です。

昨今、企業の導入が増えている「フレックスタイム制」も、変形労働時間制と並んで法定労働時間を柔軟化する制度の1つと言えますが、始業・終業時刻を会社が決めるのか、労働者が決めることができるのかという点で大きく異なります。
本記事では、始業・終業時刻を労働者が自由に決めることのできる「フレックスタイム制」とは、分けて説明します。

なお、『フレックスタイム制』の詳細は以下で解説しています。
 ➡ 【フレックスタイム制】 メリットとデメリットは?概要をわかりやすく解説

勤務形態は大きく以下の7つに分類されます。
それぞれの概要については以下で紹介しています。
 ➡ 【勤務形態】働き方の種類と特徴は?概要をわかりやすく解説

  • 通常の労働時間制(固定時間制)
  • 変形労働時間制
  • フレックスタイム制
  • 事業場外のみなし労働時間制
  • 裁量労働制
  • 高度プロフェッショナル制度
  • 管理監督者
勤務形態一覧(変形労働時間制)

変形労働時間制は、労働時間を平均する一定期間として、以下の3つの単位があります。

  • 1カ月単位
  • 1年単位
  • 1週間単位

労使協定または就業規則等において定めることにより、上記の一定期間を平均し、1週間の労働時間が40時間(週の法定労働時間)を超えない範囲内において、特定の日・週に法定労働時間を超えて労働させることができます。

変形労働時間制を活用することにより、仕事の繁閑に応じて、従業員の労働時間を柔軟に対応させることができます。
例えば、閑散期の1日の労働時間を短く設定する一方で、繁忙期には1日の労働時間を長く設定することで、忙しい時期を乗り越えられるよう対応するといったことが可能となります。

会社としては、仕事の繁閑に応じて、時間外労働手当、いわゆる残業代、を抑えることができます。
また、従業員にとっても、あらかじめ繫閑に備えた心構えを持ち、計画を立てやすくなります。

一方で、会社としては、従業員の1日の労働時間が特定の日・週によって変動することとなるため、勤怠管理が煩雑になる可能性があり、適切な運用方法を整備する必要があります。
また、従業員にとっては、1日の労働時間が長く設定されている繫忙期には、仕事の負荷が高くなるため、健康管理に注意が必要になります。

1カ月単位の変形労働時間制

1カ月単位の変形労働時間制については、労働基準法第32条の2に記載があります。

1カ月以内の一定の期間を平均し、1週間の労働時間が40時間(週の法定労働時間)を超えない範囲内であれば、36協定を締結することなく、特定の日・週に、1日および1週間の法定労働時間を超えて労働させることができます。
なお、36協定の詳細については以下で解説しています。
 ➡ 【36協定】残業時間の上限規制とは?概要をわかりやすく解説

ここで注意が必要なことは、1週間の労働時間40時間(週の法定労働時間)の計算方法です。
月単位ということで、単純に8時間×暦日数で計算した結果とは異なり、以下の計算方法によって算出されます。

1カ月単位の変形労働時間制における法定労働時間の計算方法

例えば、月初が忙しく、それ以外は比較的落ち着いている仕事の場合、以下のような労働時間を設定する例が想定されます。

1カ月単位の変形労働時間制の例

導入の手続きとして、労使協定の締結および所轄労働基準監督署への届け出、または、就業規則への記載が必要となります。
労使協定または就業規則には、対象者の範囲、労働日および労働日毎の労働時間、変形期間の起算日、有効期間(労使協定のみ)を定める必要があります。

また、当然ですが、従業員に対して、変形期間中の労働日および労働日毎の労働時間をあらかじめ周知する必要があります。

1年単位の変形労働時間制

1年単位の変形労働時間制については、労働基準法32条の4に記載があります。

1年以内の一定の期間を平均し、1週間の労働時間が40時間(週の法定労働時間)を超えない範囲内であれば、36協定を締結することなく、特定の日・週に、1日および1週間の法定労働時間を超えて労働させることができます。 1カ月単位と同様、1週間の労働時間40時間(週の法定労働時間)の計算方法は以下の通りとなります。

1年単位の変形労働時間制における法定労働時間の計算方法

1カ月単位と同様に、導入の手続きとして、労使協定の締結および所轄労働基準監督署への届け出、または、就業規則への記載が必要となります。
労使協定または就業規則には、対象者の範囲、労働日および労働日毎の労働時間、変形期間の起算日、有効期間(労使協定のみ)を定める必要があります。

ただし、1カ月単位と異なり、1年単位の場合、労使協定で定める各日の労働時間は10時間を超えてはならず、また、各週52時間を超えてはいけません。
また、対象期間が3カ月を超える場合、労働日数の限度は、原則1年280日となります。 さらに連続した労働日数の限度は原則6日となります。

1週間単位の変形労働時間制

1週間単位の変形労働時間制については、労働基準法第32条の5に記載があり、正式には、1週間単位の非定型的変形労働時間制と呼ばれます。

1カ月単位、1年単位と異なり、常時使用する労働者が30人未満小売業旅館料理店および飲食店のみが対象となり、限定的な制度となります。
1週間の労働時間が40時間(週の法定労働時間)を超えない範囲内で、1日10時間を上限として労働させることができます。

おわりに

この記事では『変形労働時間制』について解説してきました。
変形労働時間制は、週や月や年単位など一定期間の労働時間を平均して調整する勤務形態です。
制度名からは、一見柔軟性が高く、便利な制度と思われますが、単位によっても取り扱いや適した活用例は異なります。 企業の人事労務担当者は、これらの留意点を正しく理解した上で、変形労働時間制の活用を検討し、適切に運用する必要があります。

【参考】
e-Gov 労働基準法
厚生労働省 労働時間・休日
厚生労働省 変形労働時間制の概要
厚生労働省 1箇月単位の変形労働時間制 導入の手引き
厚生労働省 1年単位の変形労働時間制 導入の手引

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