【公益通報者保護法】企業の義務と内部通報への対応を解説

公益通報者保護法 雇用・両立支援

こんにちは、労務女子なおです。

会社の法令違反などを通報した従業員を、解雇や降格などの不利益な取扱いから守るための法律が「公益通報者保護法」です。また、常時使用する労働者が300人を超える企業には、内部通報に適切に対応するための体制整備が義務づけられています。

この記事では、公益通報者保護法の基本と、内部通報を受けた企業の対応について解説します。

公益通報者保護法とは

公益通報者保護法は、勤務先などの法令違反について公益通報をした人を、不利益な取扱いから保護するための法律です。通報したことを理由とする解雇は無効となり、降格、減給、雇止めなどの不利益な取扱いも禁止されます。

また、常時使用する労働者が301人以上の事業者には、次のような内部通報体制を整備することが義務づけられています。300人以下の事業者については努力義務です。

  • 内部通報の受付や調査を行う担当者を定める
  • 内部通報窓口を設置する
  • 調査や是正措置を行う体制を整える
  • 通報者に関する情報を適切に管理する
  • 通報者への不利益な取扱いを防止する
  • 制度の内容を従業員へ周知する

企業が問題を早期に把握して是正するためにも、内部通報制度を実際に利用できる状態にしておくことが重要です。なお、2026年12月1日から改正法が施行され、通報者の保護や企業に対する行政措置などが強化されます。

公益通報として保護されるための要件

会社に対する相談や告発のすべてが、公益通報者保護法上の「公益通報」に該当するわけではありません。法律による保護を受けるためには、主に次の要件を満たす必要があります。

通報できる人

保護の対象には、正社員、契約社員、パート・アルバイトなどの労働者、派遣労働者、退職後1年以内の退職者、役員などが含まれます。2026年12月1日からは、事業者と業務委託関係にある一定のフリーランスと、契約終了後1年以内のフリーランスであった人も対象に加わります。

対象となる通報

公益通報の対象となるのは、国民の生命、身体、財産などの保護に関係する法律に違反する一定の行為です。たとえば、労働基準法、労働安全衛生法、食品衛生法、個人情報保護法などに関する違反が挙げられます。ただし、すべての法律違反が対象になるわけではありません。また、不正な利益を得る目的や、他人に損害を与える目的による通報は、公益通報には該当しません。一方、調査の結果として違反が確認されなかっただけで、直ちに不正な目的の通報となるわけではありません。

通報先

法律では、通報先を次の3つに分けています。

  1. 勤務先の内部通報窓口など、事業者内部
  2. 処分や勧告などの権限を持つ行政機関
  3. 報道機関や消費者団体などの外部

どこへ通報しても同じ条件で保護されるわけではありません。特に報道機関などへの外部通報は会社への影響も大きいため、保護を受けるための要件が内部通報より厳しく定められています。

公益通報者に対する不利益な取扱いの禁止

法律上の要件を満たす公益通報を理由として、企業が通報者に不利益な取扱いをすることは禁止されています。解雇・雇止め、降格・減給、不利益な配置転換、退職の強要、嫌がらせや仕事を与えない行為などが問題となります。また、公益通報によって損害を受けたことを理由に、通報者へ損害賠償を請求することもできません。表面上は通常の人事措置であっても、実質的に通報への報復と判断される可能性があります。通報後に配置転換、評価の引下げ、懲戒処分などを行う場合は、業務上の必要性や判断の経緯を客観的に説明できるよう整理しておくことが重要です。

2026年12月1日からは、公益通報後1年以内に行われた解雇または懲戒は、公益通報を理由として行われたものと推定されます。また、公益通報を理由に解雇や懲戒をした場合の刑事罰も設けられます。さらに、正当な理由なく公益通報を妨害することや、通報者を特定する目的で「通報者探し」をすることも禁止されます。

企業に求められる内部通報体制

常時使用する労働者が301人以上の企業は、窓口を設置するだけでなく、通報の受付から調査、是正まで適切に対応できる体制を整えなければなりません。

公益通報対応業務従事者を定める

企業は、内部通報の受付、調査、是正措置などを担当し、通報者を特定できる情報を取り扱う人を「公益通報対応業務従事者」として定める必要があります。

従事者には守秘義務があり、正当な理由なく通報者を特定させる情報を漏らした場合は、30万円以下の罰金の対象となる可能性があります。通報者の氏名だけでなく、所属部署や通報内容などから本人が推測される場合もあります。情報を共有する範囲は、調査や対応に必要な最小限にとどめましょう。

調査・是正の仕組みを整える

通報を受けた後、誰が調査の必要性を判断し、事実関係を確認し、是正措置を決定するのかをあらかじめ定めておく必要があります。通報された人や、その人と密接な関係にある人を調査担当者にしないなど、利益相反を避ける仕組みも必要です。また、通報者に対する不利益な取扱いや、通報者を特定する情報の不必要な共有を防ぐための措置も求められます。

制度を従業員に周知する

制度があっても、従業員が窓口や利用方法を知らなければ機能しません。通報窓口、利用できる人、秘密の取扱い、不利益な取扱いが禁止されていることなどを、社内規程や研修、イントラネットなどを通じて周知しましょう。

2026年12月1日からは、従事者を適切に指定していない企業に対する命令や立入検査、命令違反などへの罰則も設けられます。規程や窓口が存在するだけでなく、制度が実際に機能しているかを確認することが大切です。

内部通報を受けたときの対応と注意点

内部通報を受けたときは、一般的に次の流れで対応します。

通報を受け付ける

通報内容を確認し、必要に応じて通報者から詳しい事情を聞き取ります。この段階から、通報者を特定する情報の取扱いに注意が必要です。企業によっては、内部通報制度の主管部署が人事ではなく、法務部門やコンプライアンス部門であることもあります。人事労務担当者が相談を受けた場合は、自社の規程や役割分担を確認し、必要に応じて主管部署と連携しましょう。ただし、情報の共有範囲は必要最小限とします。

通報者の意向を確認する

通報者が会社に求める対応、希望する連絡方法、匿名性に関する意向などを可能な範囲で確認します。調査を始めれば、関係者に通報があったことが伝わり、通報内容や関係者との関係から通報者が推測される可能性もあります。匿名性を完全には保証できないことや、会社として調査が必要になる場合があることを事前に説明し、調査の進め方を通報者と確認しておくことが大切です。通報者を特定する情報を関係者へ伝える必要がある場合は、その必要性を慎重に検討し、原則として本人の意向を確認します。

調査の必要性と優先度を判断する

通報内容や資料を確認し、調査の要否、担当者、対象範囲などを決めます。

内部通報には、客観的な事実が十分に示されていないもの、通報者の主観や誤解を含むもの、場合によっては他者を陥れる目的で故意に虚偽の内容を伝えるものが含まれる可能性もあります。すべての通報に同じ規模の調査を行うと、担当部署の負担が大きくなり、重要な案件への対応が遅れるおそれがあります。そのため、通報内容の具体性、根拠となる資料、緊急性、想定される影響などを確認し、必要な調査の範囲や優先順位を判断することが大切です。情報が不足している場合は追加の確認を行い、正当な理由により調査を行わない場合も、その理由を記録しておきましょう。ただし、調査で事実が確認できなかったことだけを理由に、悪意のある通報と判断してはいけません。

企業の規模や通報件数に応じて、無理なく継続できる役割分担や判断基準を整え、通報の内容に応じた対応を行うことが重要です。公益通報への該当性や調査方法の判断が難しい場合は、法務・コンプライアンス部門や弁護士などの専門家に相談します。

事実関係を調査する

関係資料の確認や関係者へのヒアリングなどを行います。通報された人が調査に関与しないようにするなど、公正性を確保します。通報者と対象者の関係が悪い場合や、通報内容の一部が事実と異なる場合でも、直ちに悪意のある通報と決めつけず、客観的な事実を確認しましょう。調査では、誰が通報したのかを明らかにすることではなく、通報された事実の有無を確認することが重要です。ヒアリングの際にも、通報者を推測できる情報を必要以上に伝えないよう注意します。

是正・再発防止を行う

法令違反などが確認された場合は、違反行為の中止、関係者への処分、業務手順の見直し、研修など、必要な是正・再発防止措置を講じます。通報後に通報者の配置や評価などを変更する場合は、通報への報復と受け取られないよう、必要性と判断根拠を慎重に確認しましょう。

通報者へ結果を伝える

関係者のプライバシーなどに配慮しながら、可能な範囲で調査結果や対応状況を通報者へ伝えます。通報を放置したり、対応状況をまったく知らせなかったりすると、制度への信頼を損ない、行政機関や報道機関などへの外部通報につながる可能性があります。

おわりに

内部通報制度は、企業が問題を早期に把握し、自ら是正するための重要な仕組みです。人事労務担当者は、自社の通報窓口や主管部署、対応の流れを確認しておきましょう。実際に通報を受けた場合は、法務・コンプライアンス部門などとも連携し、通報者の秘密を守りながら公正に対応することが大切です。

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