【社会保障制度】4つの柱?概要をわかりやすく解説

社会保障制度 給与・社会保険

こんにちは、IT企業で人事をしている労務女子なおです。
この記事では、日本における『社会保障制度』に関して3分程度で概観できるよう解説します。

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日本の社会保障制度とは

日本における社会保障制度は、「社会保険」、「社会福祉」、「公的扶助」、「保健医療・公衆衛生」の4つの柱から成る、国民の「安心」や生活の「安定」を支えるセーフティネットとしての役割を担う制度です。

日本国憲法第25条は、「すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と定めており、国民の「生存権」を保障することが国の責務であるとし、国は、同条に基づき社会保障制度を整備しています。

社会保障制度の4つの柱

なお、社会保障の柱の1つである『社会保険』の詳細は以下で解説しています。
 ➡ 【社会保険】医療、介護、年金、労災、雇用?概要をわかりやすく解説

社会保障の特徴

日本の社会保障制度の特徴は、主に以下の4点が挙げられます。

1.国民「皆」保険、「皆」年金体制
1961年に、世界でも珍しい「皆」保険制度が導入されました。社会保障給付の大宗を占める年金・医療・介護を、税法式ではなく、社会保険方式を採用し、保険料を支払った人に給付を行い、負担と給付が結びついています。

2.社会保険方式に公費を投入し、保険料と税の組み合わせで財政運営
社会保障の財源は、約60%が保険料、約40%が公費、残り数%が資産収入で構成されています。支払い能力のない人の補填等、皆保険の下支えを一つの理由として公費を投入しています。

3.職域保険と地域保険の二本立て
会社員(被用者)対象の職域保険(健康保険、厚生年金保険)と、自営業者や無職の人など被用者以外を対象とした地域保険(国民健康保険、国民年金)で構成されています。

4.国・都道府県・市町村と民間主体が役割を分担し連携
年金は国、医療は都道府県、福祉は市町村がそれぞれ中核となり制度を運営しています。医療・介護や福祉サービスは、民間が主体となって重要な役割を果たしています。

社会保障の給付と負担

社会保障の給付費は、2023年度(予算ベース)134.3兆円となっています。この金額規模は日本のGDPの23.5%に相当します。社会保障給付費は、年々増加傾向にあり、今後も高齢化に伴い、そのトレンドは変わらないと見込まれています。

なお、2010年は105.4兆円、2000年は78.4兆円、1990年は47.4兆円、1980年は24.9兆円、1970年は3.5兆円となり、給付費の伸びが顕著であることが見てとれます。

この134.3兆円について、給付の観点からみた内訳は、以下の通りです。

  • 年金 60.1兆円(44.8%)
  • 医療 41.6兆円(31%)
  • 福祉その他 32.5兆円(24.2%)
    • うち 介護 13.5兆円(10.1%)
    • うち こども・子育て 10.0兆円(7.5%)

一方、負担の観点からみた内訳は、以下の通りです。

  • 保険料 77.5兆円(59.3%)
    • うち 被保険者拠出 41.0兆円(31.4%)
    • うち 事業主拠出 36.5兆円(27.9%)
  • 公費 53.2兆円(40.7%)
    • うち 国(一般会計) 36.7兆円(28.1%)
    • うち 地方 16.4兆円(12.6%)

社会保障制度の変遷

現在の社会保障制度の骨格は、戦後の復興期を経て、高度成長期であった1960~70年代に築かれました。なお、社会保障という言葉については、戦後まもなく公布された日本国憲法に使われたことを契機に、一般的に広まったと言われています。

戦後の混乱・生活困窮者の緊急支援の要請を背景に、日本国憲法第25条による社会保障の基本的な理念が構築され、GHQの指導の下に、栄養改善や伝染病予防の施策や、生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法といった制度が整備されていきました。

その後、戦後の混乱期からの立直りや高度経済成長に伴い、1961年(昭和36年)に国民「皆」保険、「皆」年金体制が実現します。更に、1973年(昭和48年)には、老人医療費の無料化など、「福祉元年」と呼ばれる社会保障制度の大幅な拡充がなされました。

オイルショック以降の高度経済成長が終わりを迎える頃、経済の安定成長化や高齢化の進展といった社会経済の変化を踏まえた、社会保障制度の全面的な見直しが行われます。それが、1982年(昭和57年)の老人保健法の成立や、1985年(昭和60年)の「年金大改革」と呼ばれる基礎年金の導入・給付水準の適正化となります。

その後も高齢化はより進行と同時に、少子化の進行、バブル崩壊を契機に低経済成長時代に突入します。社会保障制度の持続可能性を高める改革が急務となり、長期的な社会保障給付の伸びを抑制する施策や医療や介護の効率化等の供給コスト低減の取組などが着手されています。

社会保障制度を巡る主な変遷は、以下の年表となります。

社会保障制度の変遷

おわりに

この記事では、日本における『社会保障制度』について解説してきました。
日本の社会保障制度は、戦後の復興期を経て、高度成長期であった1960~70年代にその骨格が築かれ、その後も日本を取り巻く社会経済の環境変化に合わせて、その役割や機能が見直されてきました。現在も、少子高齢化を筆頭とする多様な課題に直面しながら、制度に改革が求められています。企業の人事労務担当者としては、社会保障に関して、自ずと社会保険領域の業務を通じての接点が多くなりますが、社員の生活をはじめ、あらゆる場面で関りのある分野となりますので、その前提となる基礎知識や全体感を正しく理解し、各種の実務を行う必要があります。

【参考】
e-Gov 日本国憲法
厚生労働省 社会保障全般
厚生労働省 社会保障改革

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