【最低賃金法】地域別最低賃金と特定最低賃金?概要をわかりやすく解説

最低賃金法 給与・社会保険

こんにちは、IT企業で人事をしている労務女子なおです。
本記事では『最低賃金法』に関して3分程度で概観できるよう解説します。

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最低賃金法とは

最低賃金法とは、国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする法律です。もともとは労働基準法において最低賃金制度が定められていましたが、1959年4月15日に最低賃金法として公布されました。
同法に基づく最低賃金制度により、仮に最低賃金額より低い賃金を労働者と使用者双方の合意の上で定めた場合も、その金額は無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたこととなります。

同法の目的は、以下の条文の通り、第1条に規定されています。
各法律の第1条には、その法律の目的や趣旨が定義されており、当該法律の概要を理解することに役立ちます。

【最低賃金法 第1条】 条文抜粋

(目的)
第一条
 この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

最低賃金には、後述の通り、大きく2種類が存在し、「①地域別最低賃金」、「②特定(産業別)最低賃金」に分かれますが、一般的に、最低賃金と言う際には、「①地域別最低賃金」を指すことが多いです。
最低賃金は、(1)労働者の生計費、(2)労働者の賃金、(3)通常の事業の賃金支払能力、を総合的に勘案し、都道府県ごとに決定されます。
なお、労働者の生計費を考慮する際には、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮することとされています。

最低賃金は、毎年7月頃に後述の審議会にて目安となる改定額が示され、それを元に各都道府県が決定し、10月頃に反映されます

最低賃金の対象となる賃金とは、毎月支払われる基本的な賃金となります。臨時的な賃金(結婚手当など)、賞与、所定外賃金(時間外労働手当、休日労働手当、深夜勤務手当など)は、対象外となります。

なお、労働基準法における『賃金』の詳細は以下で解説しています。
 ➡ 【賃金】賃金支払いの5原則?概要をわかりやすく解説

最低賃金の種類

最低賃金には、大きく2種類が存在します。

① 地域別最低賃金
② 特定(産業別)最低賃金

地域別最低賃金

都道府県ごとに定められた最低賃金のことを指します。
産業や職種に関係なく、当該都道府県の事業所に適用されます。また、正社員に限定されず、有期契約社員、派遣社員、パートタイム労働者、など全ての労働者に適用されます。なお、派遣社員については、派遣先事業場の最低賃金が適用されます。

地域別最低賃金の決定プロセスは、毎年、最低賃金法に基づき、労働者代表、使用者代表、公益代表の委員で構成される「中央最低賃金審議会」において議論の上、引き上げ額の目安が提示され、それを参考にしながら、各都道府県の「地方最低賃金審議会」が、各地域の実情等を踏まえた審議・答申を経て、都道府県労働局長により決定されます。

2023年度の地域別最低賃金は、昨年比で過去最大の41円の引き上げとなり、全国加重平均額1,004円となっています。うち上位の都道府県は、東京都1,113円、神奈川県1,112円、大阪府1,064円となっており、一方、下位は、東北、四国、九州等の複数県が名を連ねており、最下位は岩手県の893円となっています。

地域別最低賃金額以上の賃金を支払わない場合には、罰則として50万円以下の罰金が定められています。

特定(産業別)最低賃金

特定の産業または職業ごとに定められた最低賃金のことを指します。
この特定(産業別)最低賃金は、地域別最低賃金を下回ることはできないこととされています。

特定(産業別)最低賃金の決定プロセスは、関係する労使からの申出に基づき、地方最低賃金審議会の調査審議を経て、同審議会が必要と認めた場合に設定されます。

2023年3月末現在、各都道府県労働局および全国において設定されている特定(産業別)最低賃金は、設定件数226件、適用使用者数約9万人、適用労働者数約291万人となっています。

特定(産業別)最低賃金額以上の賃金を支払わない場合、最低賃金法においての罰則規定はないものの、労働基準法に基づき、罰則として30万円以下の罰金が定められています。

地域別最低賃金と特定最低賃金

最低賃金法の変遷

最低賃金は、もともとは労働基準法において最低賃金制度として定められていましたが、1959年4月15日に最低賃金法として公布されました。
法制化の段階において、政府は将来的に全産業一律の最低賃金を定める方式が望ましいとしながらも、産業や規模に応じて経済力や賃金に格差がある状況に鑑みて、業種、職種、地域別の実態に応じて最低賃金を定めていくべきとして、業者間協定方式を中心とした最低賃金制となる同法が成立しました。

その後、1968年5月に改正最低賃金法が成立し、それまでの業者間協定方式を廃止し、審議会方式へと移行しました。

1976年1月に、全ての都道府県で地域別最低賃金が設定されることとなります。

最低賃金額は、2000年度は659円(前年比+5円)、2010年度は730円(前年比+17円)、2020年度は902円(前年比+1円)となっています。 2023年度は1,004円となり、初めて1,000円台に乗りました。

最低賃金全国平均の推移

おわりに

この記事では『最低賃金法』について解説してきました。
最低賃金法は、地域別もしくは産業別に最低賃金を定めた法律です。最低賃金は、雇用形態にかかわらず全ての労働者に適用されますので、企業の人事労務担当者は、従業員の賃金の設定の際には、必ず最低賃金額以上となっていることを確認しておく必要があります。
また、最低賃金は毎年見直しの審議がされていますので、一回限りの確認ではなく、継続的にその動向にも注視をしておき、必要に応じて対応していくことが必要となります。

【参考】
e-Gov 最低賃金法
厚生労働省 賃金(賃金引上げ、労働生産性向上)
厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧
厚生労働省 最低賃金に関する特設サイト

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