こんにちは、労務女子なおです。
障害者雇用や法定雇用率について調べていると、「障害者雇用納付金」という言葉を目にすることがあります。「法定雇用率を達成できなかったときに支払う罰金?」「納付金を支払えば、障害者を雇用しなくてもよい?」と疑問に思う方もいるかもしれません。障害者雇用納付金制度は、「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)に基づき、障害者を雇用する事業主の経済的な負担を調整し、雇用を促進するための制度です。納付金の支払いによって障害者の雇用義務がなくなるわけではありません。
この記事では、制度の目的、納付金の対象となる事業主や計算方法、調整金・報奨金との違い、申告手続きの基本を解説します。
障害者雇用納付金制度とは
障害者を雇用する際には、職場環境や設備の整備、雇用管理上の工夫などが必要となり、事業主に一定の費用負担が生じる場合があります。障害者雇用納付金制度は、障害者の雇用は事業主が共同して担う責任であるという考え方に基づき、事業主間の経済的な負担を調整する制度です。法定雇用率を下回る事業主から納付金を徴収し、その財源を、障害者を多く雇用する事業主への調整金や助成金などに充てています。
制度の運営は、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が担っています。
納付金を納めても障害者の雇用義務はなくならない
障害者雇用納付金は、法定雇用率を達成できなかったことに対する罰金ではありません。一方で、納付金を支払えば障害者を雇用しなくてもよい、という制度でもありません。
障害者雇用率制度に基づく雇用義務と、納付金制度は別の仕組みです。納付金を納めることによって雇用義務が免除されるわけではないため、未達成の事業主も、雇用の促進に向けて採用や職場環境の整備などを検討する必要があります。
障害者雇用納付金の申告が必要な事業主
常時雇用する労働者の総数が100人を超える事業主は、障害者雇用納付金の申告対象となる場合があります。ここでいう「100人を超える」は、ある月の人数だけで判定するものではありません。申告義務の判定では、前年度の各月の算定基礎日における常用雇用労働者の総数が100人を超える月が、連続または断続して5か月以上あるかを確認します。対象となる場合、100人を超えた月だけでなく、100人以下だった月も含めて12か月分を申告します。
申告義務の有無は、原則として法人単位で判定します。各事業所の人数を単純に別々に判断するのではなく、会社全体の対象労働者数を確認する必要があります。また、納付金額が0円となる場合でも、申告が必要なことがあります。
ただし、特例子会社制度などの認定を受けている場合は、親会社と特例子会社など複数の事業主の雇用を通算して、雇用率を算定する特例があります。この場合、納付金の申告・申請も親会社が特例子会社分を含めて行います。制度の概要は、以下の記事で解説しています。
➡【特例子会社とは】制度の仕組みや設立要件を解説
短時間労働者などの数え方や、事業年度の途中で会社を設立・廃止した場合の取扱いには細かなルールがあります。実際の判定では、その年度の記入説明書を確認しましょう。
納付金の額と計算方法
法定雇用率を達成していない申告対象事業主は、法定雇用障害者数に不足する人数に応じて、納付金を納めます。納付金の額は、原則として次のように計算します。
不足する障害者数 × 不足している月数 × 1人当たり月額5万円
不足人数は、実際に雇用する障害者の数をそのまま数えるのではなく、障害の程度や週所定労働時間などに応じたカウント方法で算定します。たとえば、重度障害者は2人分として数える場合があるなど、個別の計上ルールがあります。
2026年7月1日から民間企業の法定雇用率は2.5%から2.7%に引き上げられました。納付金の計算では、対象年度の各月に適用される法定雇用率を確認する必要があります。年度の途中で雇用率が変わる場合は、月ごとに適用される率が異なることがあります。
納付金制度で支給されるお金
納付金制度では、納付金の徴収だけでなく、障害者を雇用する事業主への支援も行われています。主な支給金は次のとおりです。
| 制度 | 主な対象・内容 |
|---|---|
| 障害者雇用調整金 | 常用雇用労働者が100人を超える事業主で、法定雇用率を超えて障害者を雇用している場合に支給。現在、超過人数1人当たり月額29,000円(対象人数が年120人月を超える部分は月額23,000円) |
| 報奨金 | 常用雇用労働者が100人以下の事業主で、雇用障害者数が一定数を超える場合に支給。現在、基準を超える人数1人当たり月額21,000円(対象人数が年420人月を超える部分は月額16,000円) |
| 在宅就業障害者特例調整金・特例報奨金 | 在宅就業障害者や在宅就業支援団体に仕事を発注し、対価を支払った事業主が申請できる支給金 |
| 各種助成金 | 障害者の雇入れや、雇用継続のための職場環境整備などにかかる費用の一部を助成 |
調整金や報奨金は自動的に支給されるものではなく、事業主からの申請が必要です。支給要件や金額は制度改正で変わることがあるため、申請する年度のJEEDの案内を確認してください。
申告・納付の手続き
申告・申請の対象期間は、原則として前年度(4月から翌年3月まで)です。たとえば、令和8年度は、令和7年4月から令和8年3月までの雇用状況が対象となります。
申告・申請期間は年度ごとにJEEDから案内されます。例年、常用雇用労働者が100人を超える事業主の納付金・調整金などは4月1日から5月15日まで、100人以下の事業主が報奨金などを申請する場合は4月1日から7月31日までが目安です。土日祝日などにより期限が変わる場合もあるため、申告する年度の最新案内を確認しましょう。
申告・申請は、電子申告申請システムを利用する方法のほか、管轄の都道府県申告申請窓口への郵送または持参でも行えます。申告や申請を行う際は、各月の労働者数や障害者の雇用状況を確認できる資料を整理しておくことが大切です。
人事労務担当者が確認しておきたいこと
制度の対象となる事業主は、年度末にまとめて人数を確認するだけではなく、毎月の労働者数と障害者雇用数を把握できる体制を整えておくことが大事です。特に、次の点は申告前に確認しておきたい事項です。
- 常用雇用労働者数の算定方法と、会社全体での人数
- 短時間労働者のカウント方法
- 法定雇用障害者数と、障害者のカウント方法
- 各月の法定雇用率や、年度途中の制度改正
- 調整金・報奨金などを申請する場合の要件と期限
- 申告内容を裏付ける労働者名簿、出勤・賃金資料、障害の確認書類などの保管
障害者雇用の対応は、納付金の金額だけで判断するものではありません。採用後に能力を発揮し、安定して働ける環境を整えることも大切です。雇用義務や法定雇用率、差別禁止・合理的配慮については、障害者雇用促進法の記事もあわせてご覧ください。
➡【障害者雇用促進法】雇用義務、法定雇用率とは?概要をわかりやすく解説
おわりに
障害者雇用納付金制度は、障害者の雇用に伴う事業主間の経済的な負担を調整し、障害者の雇用の促進と職業の安定を図るための制度です。常用雇用労働者の総数が一定の基準を超える事業主は、法定雇用率を下回る場合に納付金を納めることがあります。また、納付金を納めても障害者の雇用義務がなくなるわけではありません。申告対象や納付額の計算には、月ごとの労働者数、障害者のカウント方法、法定雇用率の適用時期などを確認する必要があります。具体的な申告・申請では、JEEDの最新の記入説明書や案内を確認しましょう。
【参考】
・障害者雇用納付金制度の概要(JEED)
・障害者雇用納付金制度 Q&A(JEED)
・申告申請期限、提出方法、納付期限・支給時期(JEED)
・障害者雇用納付金制度改正の概要(JEED)
・障害者の雇用の促進等に関する法律(e-Gov法令検索)
最後に、障害者雇用制度の全体像や、企業での採用・職場定着、合理的配慮について本で学びたい方には、以下の本も参考になります。