【次世代育成支援対策推進法】くるみん認定とは?概要をわかりやすく解説

次世代育成支援対策推進法 雇用・両立支援

こんにちは、IT企業で人事をしている労務女子なおです。
本記事では『次世代育成支援対策推進法』に関して、3分程度で概観できるよう解説します。

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次世代育成支援対策推進法

次世代育成支援対策推進法とは、次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、育成される環境を整備するために、国、地方、公共団体、企業、国民が担う責務を明らかにし、次世代育成支援対策推進に関する必要事項を定めた法律です。
同法は、当初2015年3月末までの時限立法として、2005年4月に施行され、2015年4月には改正法施行、2025年3月末まで有効期限が10年間延長されました。「次世代法」と略されることもあります。

具体的には、以下の2つが大きなポイントとなります。

① 一般事業主行動計画の策定・届出
② 「くるみん認定」「プラチナくるみん認定」の認定制度

上記①については、「常時雇用する労働者が101人以上の事業主」を対象に義務となります。
当初は、義務規定がありませんでしたが、2009年4月から301人以上の事業主が義務化の対象となり、2011年4月から現在の101人以上の事業主に対象が拡大されました。

上記②の認定制度については、行動計画の策定・届出を行った事業主のうち、計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした場合に、「くるみん認定」、「トライくるみん認定」、「プラチナくるみん認定」を付与する制度となります。
当初は、「くるみん認定」のみでしたが、2015年4月より「くるみん認定」をすでに受けた企業に対して、継続的な取組みを促すために、「プラチナくるみん認定」が創設されています。
また、2022年4月より、上記3つの認定制度の一類型として、不妊治療と仕事を両立しやすい職場環境整備に取り組む企業の認定制度「プラス」が創設されています。

上記の通り、次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、育成される環境を整備するために時限立法として成立した同法ではありますが、随時内容がアップデートされていますので、企業の人事労務担当者はこうした動きを正しく把握しておく必要があります。
なお、法的義務であるものの、届出しないことへの罰則規定はありません

一般事業主行動計画

「一般事業主行動計画」とは、従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備などのために対策を定めるものです。
行動計画の策定は、「常時雇用する労働者が101人以上の事業主」に義務づけられています。

行動計画の策定は、以下のステップで進めることになります。

① 自社の現状や従業員のニーズ把握
② 行動計画の策定、社内周知、公表
③ 行動計画の届出
④ 取組の実施、効果測定

それぞれの詳細は以下の通りです。

自社の現状や従業員のニーズ把握

仕事と子育ての両立にあたって障害となっている事項や、従業員のニーズを把握します。
厚生労働省のガイドラインには、以下の事項を過去5年程度さかのぼって調べることを具体例として挙げています。

  • 妊娠・出産を機に退職する従業員がどれくらいいるか。
  • 子育て中の従業員がどれくらいいるか。
  • 育児休業、子の看護休暇、育児のための柔軟な働き方などの、性別や年齢別の利用者数はどうなっているのか。平均的な利用期間はどのくらいか。休業者が行っていた業務は、どのように処理されているか

また、従業員のニーズ把握においては、以下の項目を調べることを具体例として挙げています。

  • ワーク・ライフ・バランス支援制度の認知度、利用意向
  • 現在の支援制度に対する満足度
  • 仕事と子育ての両立で苦労している点
  • 労働時間の短縮や年次有給休暇の取得への希望
  • 今後、会社で検討・実施してほしい支援制度  など

行動計画の策定、社内周知、公表

前述①を踏まえて、行動計画を策定します。
行動計画の策定にあたっては、「課題の優先順位」、「計画期間」、「目標」、「目標達成のための対策」、「実施時期」を決めます。

「計画期間」は、特段の定めはなく、各企業の実情を踏まえて設定することとなります。
「目標」は、可能な限り定量的な数値目標とすること、および、厚生労働省の行動計画策定指針の「六 一般事業主行動計画の内容に関する事項」に掲載されている項目を参考することが推奨されています。

策定した行動計画は、策定の日からおおむね3カ月以内に、従業員に対して、電子メールや社内イントラネット等を通じて、周知する必要があります。
加えて、外部に対しても、策定の日からおおむね3カ月以内に、厚生労働省が運営する「両立支援のひろば」への掲載や自社ホームページへの掲載を通じて公表する必要があります。

行動計画の策定例は、厚生労働省が公表しているパンフレットにも記載がありますので、それも参考に作成すると良いでしょう。

行動計画の届出

策定した行動計画は、策定の日からおおむね3カ月以内に、電子申請、郵送又は持参により、管轄の都道府県労働局に届け出ます。
届出にあたり、「一般事業主行動計画策定・変更届」(様式第一号)が厚生労働省のホームページに掲載されています。
なお、行動計画の添付は不要とされています。

行動計画の策定届の記入例は、厚生労働省が公表しているパンフレットに記載があります。

取組の実施

行動計画は策定して終わりではなく、策定した目標に向けた対策を実施します。
なお、行動計画の目標の未達成に対して何らかのペナルティ等が科されることはありません。

くるみん認定・プラチナくるみん認定

政府は、行動計画の策定・届出を行った事業主のうち、計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした企業を「子育てサポート企業」として認定する制度を設けています。

申請は、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)で受け付けており、評価された企業については、厚生労働大臣により認定を受けることとなります。
認定を受けることで、「くるみん」の認定マークを商品などに付することができます。
なお、認定条件を満たし、必要書類を準備して申請して以降も、正式に認定を受けるまでには、窓口の方からの追加の確認を含め、数カ月程度の期間を要することは想定しておくと良いかと思います。

最上位の「プラチナくるみん」の下に、「くるみん」、「トライくるみん」認定があります。
また、不妊治療と仕事との両立に関する認定制度 「プラス」があります。

2024年1月末現在、620社の企業が「プラチナくるみん」、4,420社の企業が「くるみん」の認定を受けており、そのうち69社の企業が「プラス」認定を受けています(注:いずれの数字も認定決定した企業のうち公表可とした企業のみ)

くるみん認定制度一覧

プラチナくるみん
プラチナくるみんの認定制度は、「くるみん認定」をすでに受けた企業に対して、継続的な取組みを促すために、2015年4月より創設されています。
プラチナくるみんの認定のためには、事前にくるみん認定又はトライくるみん認定を受けた上で、より高い水準の取組を行い、特例認定基準の12項目全てを満たす必要があります。
認定基準の項目は、後述のくるみんとも一部同様ですが、その要件水準が高くなっています。

くるみん
くるみんの認定のためには、認定基準の10項目全てを満たす必要があります。

くるみんの認定基準とマークは複数回変更がされています。
企業によって使用しているマークが微妙に異なっている背景はそれが理由となります。
くるみんの認定制度が開始されて以降、最初の変更は2015年4月です。
同年は、プラチナくるみんが創設された年ですが、くるみんについては、マークのデザインが新しくなり、従来認定された年が記載されていましたが、認定を受けた回数を☆マークで示す形式に変更となりました。
その後、2017年4月からは、認定基準の追加と見直しがされ、より厳しい基準となると同時に、マークのデザインも再度新しくなりました。
認定を受けた回数を☆マークで示すことは継続しつつ、マークの上部に最新の認定年を記載する形式になりました。
更に、2022年4月からは、再度認定制度の見直しがなされ、トレンドマークである“おくるみ”の色が、従来の白抜きから、淡いピンク色になりました。

トライくるみん
トライくるみんの認定制度は、2022年4月より創設されています。
トライくるみんの認定のためには、認定基準の10項目全てを満たす必要があります。
トライくるみんの認定を受けることで、くるみん認定を受けていなくても直接プラチナくるみん認定を申請することができます。

上記3つの認定基準をまとめると以下の通りとなります。

くるみんの認定基準

プラス認定
トライくるみん同様、プラス認定制度は、2022年4月より創設されています。
プラス認定のためには、くるみん等の認定基準を満たした上で、不妊治療と仕事との両立に関する以下の4項目のプラス認定基準を全て満たす必要があります。

  • 不妊治療のための休暇制度および柔軟な勤務を促す制度を設けていること
  • 不妊治療と仕事との両立に関する方針を示し、措置の内容とあわせて社内周知していること
  • 不妊治療と仕事との両立に関する研修や理解を促す取り組みを実施していること
  • 不妊治療を受ける労働者からの相談に応じる担当者(両立支援担当者)を選任し、社内周知していること


なお、くるみん認定制度と似て非なる制度に、えるぼし認定制度があります。
くるみん認定は、「子育てサポート企業」として認定される制度である一方で、えるぼし認定は、女性活躍推進に関する状況が優良な企業を認定する制度です。
えるぼし認定制度については、「女性活躍推進法」に基づく制度で、「次世代育成支援対策推進法」に基づくくるみん認定制度とは根拠となる法律が異なります。
えるぼし認定制度においても、くるみん認定制度と同様に、その認定基準に応じて、「プラチナえるぼし」、「えるぼし」があります。

えるぼしとくるみんの比較

なお、『えるぼし認定制度』および『女性活躍推進法』の詳細は以下で解説しています。
 ➡ 【女性活躍推進法】えるぼし認定や情報公表とは?概要をわかりやすく解説

おわりに

この記事では『次世代育成支援対策推進法』について解説してきました。
次世代育成支援対策推進法は、次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、育成される環境を整備するために、国、地方、公共団体、企業、国民が担う責務を明らかにし、次世代育成支援対策推進に関する必要事項を定めた2025年3月末まで時限立法です。
同法にて義務化された内容やくるみん認定を受けるための形式的な対応に意識が集中してしまいがちですが、企業の人事労務担当者としては、同法の趣旨や自社の実態を踏まえた本質的な取り組みが重要となります。

【参考】
e-Gov 次世代育成支援対策推進法
厚生労働省 職場における子育て支援
厚生労働省 次世代育成支援対策推進法

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