【ストレスチェック】企業の義務?対象は?概要をわかりやすく解説

ストレスチェック 雇用・両立支援

こんにちは、IT企業で人事をしている労務女子なおです。
本記事では『ストレスチェック』に関して3分程度で概観できるよう解説します。

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ストレスチェックとは

ストレスチェックとは、「心理的な負担の程度を把握するための検査」をいい、2014年の労働安全衛生法の改正(2015年12月施行)により、事業者による実施が義務付けられました。
企業は、年に1回以上、労働者へ自記式の調査票を配布するなどしてストレスチェックを行わなければなりません。

労働者のストレスの程度を把握し、労働者自身のストレスへの気付きを促すとともに、職場改善につなげ、働きやすい職場づくりを進めることによって、労働者がメンタルヘルス不調となることを未然に防止すること(一次予防)を主な目的としており、ストレスチェックの結果に基づく面接指導の実施等とあわせてストレスチェック制度と呼ばれます。

なお、面接指導に関しては、上記の高ストレス者を対象とする面接指導の他に、長時間労働者を対象とする面接指導(労働安全衛生法第66条の8、9)がありますが、その『医師による面接指導』の詳細は以下で解説しています。
 ➡ 【医師による面接指導】労働時間の把握?概要をわかりやすく解説

また、上記のストレスチェックとは別に、企業には、事故や疾病の防止することを目的に、労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければならないとされています。その『健康診断』の詳細は以下で解説しています。
 ➡ 【健康診断】企業の義務?種類と対象は?概要をわかりやすく解説

ストレスチェック制度の実施手順

ストレスチェック制度の全体の流れは、以下の通りとなります。

  1. 導入前の準備
  2. 調査票の配布、記入
  3. ストレス状況の評価・医師の面接指導の要否の判定
  4. 本人に結果を通知
  5. 本人からの面接指導の申出
  6. 医師による面接指導の実施
  7. 就業上の措置の要否・内容について医師から意見聴取
  8. 就業上の措置の実施
  9. 上記4~8 と並行して、一定規模の集団ごと集計・分析
  10. 上記9 の結果を踏まえ、職場環境の改善
  11. メンタルヘルス不調を未然に防止

ストレスチェックの実施

常時 50 人以上の労働者を使用する事業場は、常時使用する労働者に対してストレスチェック制度の実施義務があります。常時 50 人未満の労働者を使用する事業場については、当分の間、努力義務とされています。

一方、検査を実施する者は、厚生労働省令で定める以下の者でなければならないとされています。外部委託も活用されている企業もあります。
なお、検査の実施の事務に従事してはならない者として、検査を受ける労働者に対して解雇、昇進、異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者があげられていますので、注意が必要です。

  1. 医師
  2. 保健師
  3. 検査を行うために必要な知識についての研修であって厚生労働大臣が定めるものを修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士又は公認心理師

ストレスチェックの対象者となる「常時使用する労働者」には、以下の①、②の両方を満たす短時間労働者も含みます。①期間の定めのない契約により使用される者であること。もしくは、期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上使用されることが予定されている者、および、1年以上使用されている者。②1週間の労働時間数がその事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分3以上であること。
なお、一般定期健康診断の対象者と同様です。

検査項目

検査は、労働者へ自記式の調査票を配布するなどして実施することになります。

質問票には、以下の3つの領域の項目が含まれていれば、特に指定はありません。国が推奨する質問票も公開されているため、それを活用することもできます。

  • 職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目
  • 当該労働者の心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
  • 職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目

なお、厚生労働省では、「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」を無料で提供していますので、検査体制の準備が必要な企業の人事労務担当者は参考にすると良いかもしれません。

対象者への結果通知

ストレスチェックの結果については、以下の事項を、実施者から対象者へ直接通知しなければなりません。事業者が結果を入手する必要がある場合には、本人の同意が必要です。

  • 個人のストレスチェックの結果
  • ストレスの程度(高ストレスに該当するかどうかを示した評価結果)
  • 面接指導の対象者か否かの判定結果

なお、上記に加えて、セルフケアのためのアドバイス、面接指導の申出方法についても通知することが望ましいとされています。

ストレスチェックの結果、面接指導が必要とされる労働者に対しては、面接指導の申出の勧奨を行います。ただし、申出の強要や申出しないことへの不利益取扱いにならないよう留意が必要です。

医師による面接指導

ストレスチェックの結果、高ストレス者として選定された者で、面接指導が必要と判断された方が面接指導の対象となり、その者が申出た場合に、産業医等の医師による面接指導を行います。
面接指導の結果については、5年間の保存義務があります。様式は問いません。

就業上の措置

事業者は、面接指導の実施後、概ね1カ月以内に医師から就業上の措置に関する意見を聴きます。具体的には、通常勤務の可否、就業制限・休業の必要有無などとなります。
医師の意見に基づき、必要な場合は、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の適切な措置をとります。ただし、労働者とも十分な話し合いを通じて、本人からの理解を得つつ、また、本人の不利益取扱いにならないよう留意が必要です。

集団ごとの集計・分析

高ストレス者への面接指導とは別に、実施者は、ストレスチェックの結果を集団ごとに集計・分析し、その結果を事業者に通知します。事業者は、その結果を職場環境の改善の取組みに繋げます。
集団ごとの集計・分析結果のイメージは、全国平均と職場ごとの平均を比較する判定図など、厚生労働省のホームページに紹介されています。

労働基準監督署への報告

事業者は、面接指導の実施後、ストレスチェックおよび面接指導の実施状況について、規定の様式にて、所轄の労働基準監督署に報告しなければなりません。
なお、報告する時期については、事業年度の終了後など、事業場ごとに設定して問題ありません。

おわりに

この記事では、『ストレスチェック』について解説してきました。
ストレスチェック制度は、労働者のストレスの程度を把握し、労働者自身のストレスへの気付きを促すとともに、職場改善につなげ、働きやすい職場づくりを進めることによって、労働者がメンタルヘルス不調となることを未然に防止すること(一次予防)を主な目的としています。企業の人事労務担当者としては、実施の流れとそれぞれのプロセスで実施すべき内容を理解し、適切な体制を整備する必要があります。

【参考】
e-Gov 労働安全衛生法
厚生労働省 ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等
厚生労働省  「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」ダウンロードサイト
厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」

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