【女性活躍推進法】えるぼし認定や情報公表とは?概要をわかりやすく解説

女性活躍推進法 雇用・両立支援

こんにちは、IT企業で人事をしている労務女子なおです。
本記事では『女性活躍推進法』に関して、3分程度で概観できるよう解説します。

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女性活躍推進法とは

女性活躍推進法とは、女性の個性と能力が十分に発揮できる社会を実現するため、国、地方 公共団体、民間事業主(一般事業主)の各主体の女性の活躍推進に関する責務等を定めた法律です。

同法は、2026年3月までの時限立法として2016年4月に施行され、2019年5月に改正女性活躍推進法が成立、2022年4月から全面施行されています。
正式名称を「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」といい、「女活法」と略されることもあります。

具体的には、以下の3つが大きなポイントとなります。

① 一般事業主行動計画の策定・届出
② 女性活躍に関する情報公表
③ 「えるぼし認定」、「プラチナえるぼし認定」の認定制度

上記①②については、「常時雇用する労働者が101人以上の事業主」を対象に義務となります。
当初は、300人以下の事業主については、努力義務でしたが、法改正に伴い、2022年4月から101人以上の事業主に対象が拡大されました。
なお、詳細は後述しますが、②の情報公表については、301人以上の事業主と、101人以上の事業主とで項目が異なります。

上記③の認定制度については、行動計画の策定・届出を行った事業主のうち、女性の活躍推進に関する取組の実施状況が優良である等の一定の要件を満たした場合に、「えるぼし認定」、「プラチナえるぼし認定」を付与する制度となります。
こちらについても、当初は、「えるぼし認定」のみでしたが、2020年6月より「えるぼし認定」よりも水準の高い「プラチナえるぼし認定」が創設されています。

上記の通り、女性の活躍推進を目的に時限立法として成立した同法ではありますが、随時内容がアップデートされていますので、企業の人事労務担当者はこうした動きを正しく把握しておく必要があります。
なお、法的義務ではあるものの、届出しないことへの罰則規定はありません

一般事業主行動計画

「一般事業主行動計画」とは、企業が自社の女性活躍に関する状況把握と課題分析を行い、それを踏まえた行動計画を策定するものです。
行動計画の策定は、「常時雇用する労働者が101人以上の事業主」に義務づけられています。

行動計画の策定は、以下のステップで進めることになります。

① 自社の状況把握・課題分析
② 行動計画の策定、社内周知、公表
③ 行動計画の届出
④ 取組の実施、効果測定

それぞれの詳細は以下の通りです。

自社の状況把握・課題分析

自社の女性の活躍状況を、以下の基礎項目に基づいて把握し、課題を分析します。
その結果、課題であると判断された項目については、選択項目を活用し、更なる分析を行います。
選択項目については、「①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」、「②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」それぞれ複数の項目があります。

  • 採用した労働者に占める女性労働者の割合(雇用管理区分ごとの把握が必要)
  • 男女の平均継続勤務年数の差異(雇用管理区分ごとの把握が必要)
  • 管理職に占める女性労働者の割合
  • 労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間の状況

基礎項目や選択項目の詳細内容や数字の算出方法は、厚生労働省が公表しているパンフレットを参考にしてください。
基礎項目、選択項目の把握・分析は、自社の女性活躍の取り組みを進める上で有効であることに加え、後述の行動計画の策定・届出にも関連してきます。

行動計画の策定、社内周知、公表

前述①の状況把握、課題分析の結果を勘案し、行動計画を策定します。
行動計画には、「計画期間」、「数値目標」、「取組内容」、「取組の実施時期」を盛り込むこと必要があります。
策定した行動計画は、非正社員を含めた全労働者に対して、電子メールや社内イントラネット等を通じて、周知する必要があります。
加えて、外部に対しても、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」への掲載や自社ホームページへの掲載を通じて公表する必要があります。

行動計画の策定例は、厚生労働省が公表しているパンフレットにも記載がありますので、それも参考に作成すると良いでしょう。

「計画期間」
2026年3月(2025年度)までの期間で、2年間から5年間に区切り、定期的に行動計画の進捗を検証しながら改定を行うこととなります。

「数値目標」
301人以上の事業主は、選択項目の①と②の区分ごとに1つ以上の項目を選択し、それぞれ関連する行動計画を作成する必要があります。
数値目標は、実数、割合、倍数など数値を用いるものであればいずれでもよく、計画期間内の達成を目指すものとして、実態に見合ったものを設定することとされています。
なお、101人以上300人以下の事業主については、数値目標を1つ以上定めることとされています。

「取組内容」、「取組の実施時期」
数値目標の達成に向けた取り組みと実施時期を定めます。

行動計画の届出

策定した行動計画は、電子申請、郵送又は持参により、管轄の都道府県労働局に届け出ます。
届出にあたり、「一般事業主行動計画策定・変更届(参考様式) 」が厚生労働省のホームページに掲載されています。
ただし、省令第1条に定める必要事項が記載されていれば、上記様式でなくても有効です。

また、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画と一体的に行動計画を策定した場合は、それ用の「一般事業主行動計画策定・変更届 次世代法・女性活躍推進法一体型」もあります。

行動計画の策定届の記入例は、厚生労働省が公表しているパンフレットに記載があります。

取組の実施、効果測定

行動計画は策定して終わりではなく、定期的に進捗を確認する等、点検・評価を行います。
なお、行動計画の数値目標の未達成に対して何らかのペナルティ等が科されることはありません。

女性活躍に関する情報公表(男女の賃金の差異など)

自社の女性の活躍に関する状況について、求職者等が簡単に閲覧できるように情報公表する必要があります。

情報公表の内容については、おおむね年1回以上更新することとされており、一律の締め切り等は規定されていません。
公表方法については、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」や自社ホームページ等、求職者等が容易に閲覧できるよう公表することとされています。
多くの企業が「女性の活躍推進企業データベース」を活用しており、他社の情報を閲覧可能ですので参考にすると良いでしょう。

公表する情報について、301人以上の事業主は、前述の行動計画に関連する項目の以下①の区分から、「男女の賃金の差異」を含めた2項目以上、以下②の区分から1項目以上を選択し、計3項目以上を公表する必要があります。
101人以上300人以下の事業主については、以下①と②の全項目から1項目以上選択して公表します。

女性の活躍に関する情報公表項目

なお、「男女の賃金の差異」については、日本における男女間賃金格差が他の先進国と比較しても大きい状況等の背景を踏まえて、2022年7月8日に情報公表項目に追加されました。
従来の選択項目と異なり、この項目については必須であることや、今回の改正のスピードからも、政府の本気度が伺える変更とも言えます。

「男女の賃金の差異」の数字は、男性労働者の賃金の平均に対する女性労働者の賃金の平均を割合(パーセント)で示すこととされています。
また、「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」の区分での公表が必要となります。
これらの部分については、明確な公表ルールがあるため企業によるアレンジや見せ方の工夫が困難ですが、各社の実情等を正しく説明するための「説明欄」を活用し、任意の追加情報を記載することが可能となります。
公表のイメージや数字の算出方法については、厚生労働省が公表しているパンフレットに記載があります。

また、これまで紹介してきた情報公表項目に加えて、女性の活躍に資する社内制度についても公表が可能です。

えるぼし認定・プラチナえるぼし認定

政府は、女性活躍推進に関する状況が優良な企業を認定する制度を設けています。

申請は、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)で受け付けており、評価された企業については、厚生労働大臣により認定を受けることとなります。
認定を受けることで、認定の水準に応じて、「えるぼし」もしくは「プラチナえるぼし」の認定マークを商品などに付することができます。
なお、認定条件を満たし、必要書類を準備して申請して以降も、正式に認定を受けるまでには、窓口の方からの追加の確認を含め、数カ月程度の期間を要することは想定しておくと良いかと思います。

最上位の「プラチナえるぼし」の下に、「えるぼし」認定があり、「えるぼし」認定については、評価基準を満たす項目数に応じて3段階あります。

2024年1月末現在、48社の企業が「プラチナえるぼし」、2,574社の企業が「えるぼし(3段階いずれか)」の認定を受けています。

えるぼし認定制度

プラチナえるぼし

プラチナえるぼしの認定のためには、「行動計画に定めた目標を達成すること」、「男女雇用機会均等推進者・職業家庭両立推進者を選任していること」、「プラチナえるぼしの管理職比率、労働時間等の5つの項目の全てを満たしていること」、「女性活躍推進法に基づく情報公表項目(社内制度の概要を除く)のうち、8項目以上を「女性の活躍推進企業データベース」で公表していること」が求められます。

管理職比率、労働時間等の5つの基準は、「採用」、「継続就業」、「労働時間等の働き方」、「管理職比率」、「多様なキャリアコース」の項目となります。
後述のえるぼしも、これらの評価項目は同様ですが、プラチナえるぼしはその要件水準が高くなっています。

えるぼし(3段目)

えるぼしの最上位の認定のためには、「えるぼしの管理職比率、労働時間等の5つの基準の全てを満たし、その実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること」が求められます。
後述の2段目、1段目のえるぼしにおいても、評価項目自体は同じですが、満たす項目数に応じて認定されるえるぼしが異なる体系になっています。

えるぼし(2段目)

えるぼしの2段目の認定のためには、「えるぼしの管理職比率、労働時間等の5つの基準のうち3つ又は4つの基準を満たし、その実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること」、「満たさない基準については、事業主行動計画策定指針に定められた取組の中から当該基準に関連するものを実施し、その取組の実施状況について「女性の活躍推進企業データベース」に公表するとともに、2年以上連続してその実績が改善していること」が求められます。

えるぼし(1段目)

えるぼしの1段目の認定のためには、「えるぼしの管理職比率、労働時間等の5つの基準のうち1つ又は2つの基準を満たし、その実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること」、「満たさない基準については、事業主行動計画策定指針に定められた取組の中から当該基準に関連するものを実施し、その取組の実施状況について「女性の活躍推進企業データベース」に公表するとともに、2年以上連続してその実績が改善していること」が求められます。

なお、えるぼし認定制度と似て非なる制度に、くるみん認定制度があります。
えるぼし認定が、女性活躍推進に関する状況が優良な企業を認定する制度である一方で、くるみん認定は、「子育てサポート企業」として認定される制度です。
くるみん認定制度については、「次世代育成支援対策推進法」に基づく制度で、「女性活躍推進法」に基づくえるぼし認定制度とは根拠となる法律が異なります。
くるみん認定制度においても、えるぼし認定制度と同様に、その認定基準に応じて、「プラチナくるみん」、「くるみん」、「トライくるみん」、これらの一類系として不妊治療との両立を認定する「くるみんプラス」があります。

えるぼしとくるみんの比較

なお、『くるみん認定制度』および『次世代育成支援対策推進法』の詳細は以下で解説しています。
 ➡ 【次世代育成支援対策推進法】くるみん認定とは?概要をわかりやすく解説

おわりに

この記事では『女性活躍推進法』について解説してきました。
女性活躍推進法は、女性の個性と能力が十分に発揮できる社会を実現するため、国、地方 公共団体、民間事業主(一般事業主)の各主体の女性の活躍推進に関する責務等を定めた2026年3月までの時限立法です。
同法にて義務化された内容の形式的な対応に意識が集中してしまいがちですが、企業の人事労務担当者としては、同法の趣旨や自社の実態を踏まえた本質的な取り組みが重要となります。

【参考】
e-Gov 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律
厚生労働省 女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)
厚生労働省 女性の活躍推進企業データベース

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