【パートタイム・有期雇用労働法】同一労働同一賃金?概要をわかりやすく解説

パートタイム・有期雇用労働法 雇用・両立支援

こんにちは、IT企業で人事をしている労務女子なおです。
本記事では『パートタイム・有期雇用労働法』に関して3分程度で概観できるよう解説します。

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パートタイム・有期雇用労働法とは

パートタイム・有期雇用労働法とは、正社員とパートタイム労働者、有期雇用労働者との不合理な待遇差の解消を目指すための法律です。正式名称を「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」といいます。

元々、1993年12月に施行された「パートタイム労働法(正式名称「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)」が、2018年7月に公布された働き方改革関連法により、現在の「パートタイム・有期雇用労働法」として2020年4月(中小企業は2021年4月)に施行されました。

従来のパートタイム労働法からパートタイム・有期雇用労働法へ改正された際には、法の対象となる労働者に有期雇用労働者が含まれることとなり、それ以前の労働契約法第20条に規定されていた均衡待遇規定がパートタイム・有期雇用労働法へ移管されました。

また、パートタイム・有期雇用労働法の施行と同時に、不合理な待遇の禁止等に関する指針として「同一労働同一賃金ガイドライン」が策定されました。同ガイドラインは、同一労働同一賃金の原則となる考え方や具体例を示しています。

なお、同法に違反した場合、罰則規定ではありませんが、以下の過料が課せられます。
また、その他の条文や同一労働同一賃金ガイドラインに違反した場合に関しては、罰則はありませんが、係争化した際の民事上の損害賠償の責任が生じるリスクがあるため注意が必要です。

同法第18条第1項による労働局への報告を怠る、もしくは虚偽の報告をした場合に、20万円以下の過料が課せられます(同法第30条)。
同法第6条1項による労働条件に関する文書の交付を怠った時には、行政指導の対象となり、改善が見られない場合は、10万円以下の過料が課せられます(同法第31条)。

同法の目的は、以下の第1条に規定されています。
各法律の第1条には、その法律の目的や趣旨が定義されており、当該法律の概要を理解することに役立ちます。

【パートタイム・有期雇用労働法第1条】 条文抜粋

(目的)
第一条 この法律は、我が国における少子高齢化の進展、就業構造の変化等の社会経済情勢の変化に伴い、短時間・有期雇用労働者の果たす役割の重要性が増大していることに鑑み、短時間・有期雇用労働者について、その適正な労働条件の確保、雇用管理の改善、通常の労働者への転換の推進、職業能力の開発及び向上等に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ることを通じて短時間・有期雇用労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、もってその福祉の増進を図り、あわせて経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。

同一労働同一賃金を巡った判例としては、以下が有名です。
実務において、パートタイム・有期雇用労働法や同一労働同一賃金ガイドラインだけでは、具体的な対応に迷ってしまう企業の人事労務担当者が多くいる中、これらの判例は、それぞれ争点となる項目が異なり、また、どのような論点で判断がなされているかを知るために大変参考になります。

  • ハマキョウレックス事件(最高裁 平成30年6月1日)
  • 長澤運輸事件(最高裁 平成30年6月1日)
  • 大阪医科薬科大学事件(最高裁 令和2年10月13日)
  • メトロコマース事件(最高裁 令和2年10月13日)
  • 日本郵便(東京)事件(最高裁 令和2年10月15日)
  • 日本郵便(大阪)事件(最高裁 令和2年10月15日)
  • 日本郵便(佐賀)事件(最高裁 令和2年10月15日)
  • 名古屋自動車学校事件(最高裁 令和5年7月20日)

事業主の対応

同法の対象となる「労働者」については、以下の通り定義されていますが、いずれも、パート、アルバイト、嘱託、臨時社員などの呼び方とは関係なく、実態で判断されることになります。

  • パートタイム労働者:1週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者(期間の定めのないフルタイム労働者)の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者
  • 有期雇用労働者:事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者

同法に定められている内容について、事業主の対応として押さえておきたいポイントは以下の通りです。

  • 労働条件に関する文書の交付等(第6条)
  • 就業規則の作成の手続き(第7条)
  • 相談のための体制の整備(第16条)
  • 不合理な待遇の禁止(第8条)
  • 差別的取扱いの禁止(第9条)
  • 賃金(第10条)
  • 教育訓練(第11条)
  • 福利厚生施設(第12条)
  • 通常の労働者への転換(第13条)
  • 事業主が講ずる措置の内容等の説明(第14条)

特に、同一労働同一賃金に関する詳細な対応について、企業の人事労務担当者として実務を行う立場としては、以下の「不合理な待遇の禁止(第8条)」、「差別的取扱いの禁止(第9条)」に加えて、「同一労働同一賃金ガイドライン」に一通り目を通しておくことが必要になると思います。

それそれの詳細は以下の通りです。

労働条件に関する文書の交付等(第6条)

事業主は、パートタイム労働者、有期雇用労働者を雇い入れる際に、①昇給の有無、②退職手当の有無、③賞与の有無、④相談窓口について、文書の交付などにより明示しなければならないとされています。また、それ以外も事項についても、明示するよる努めることとされています。
これに違反した場合、前述の通り、行政指導の対象となり、改善が見られない場合は、10万円以下の過料が課せられます。

なお、労働基準法においても、第15条にて、労働者を採用するときは、賃金、労働時間その他の労働条件を書面などで明示しなければないこととされています。

就業規則の作成の手続き(第7条)

事業主は、パートタイム労働者、有期雇用労働者のみに適用される労働条件を定める場合、その内容を定めた就業規則を作成・変更しようとするときは、当該事業所で雇用するパートタイム労働者、有期雇用労働者の過半数を代表とすると認められる者の意見を聴くことが努力義務とされています。

相談のための体制の整備(第16条)

事業主は、パートタイム労働者、有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に関して、その労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備しなければならないこととされています。

不合理な待遇の禁止(第8条)

同法第8条にて、通常の労働者とパートタイム労働者、有期雇用労働者の不合理な待遇差を禁止しています。
具体的には、事業主は、基本給、賞与、通勤手当、皆勤手当、福利厚生、教育訓練などの待遇について、①職務の内容(業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度)、②職務の内容及び配置の変更の範囲、③その他の事情のうち、当該待遇の性質及び目的に照らして適切と認められるものを考慮して、通常の労働者とパートタイム労働者、有期雇用労働者の間に不合理と認められる相違を設けてはならないこととされています。
上記内容が、いわゆる「均衡待遇規定」となります。

差別的取扱いの禁止(第9条)

同法第9条にて、パートタイム労働者、有期雇用労働者の差別的取扱いを禁止しています。
具体的には、事業主は、①職務の内容が通常の労働者と同一のパートタイム労働者、有期雇用労働者であり、②職務の内容及び配置の変更の範囲が、雇用関係が終了するまでの全期間において、通常の労働者と同一と見込まれる者については、パートタイム労働者、有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならないこととされています。
上記内容が、いわゆる「均等待遇規定」となります。

賃金(第10条)

事業主は、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用するパートタイム労働者、有期雇用労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力、経験その他の就業の実態等を勘案し、その賃金を決定することが努力義務とされています。

教育訓練(第11条)

事業主は、通常の労働者と職務内容が同じパートタイム労働者、有期雇用労働者に対しては、職務遂行に必要な能力を付与するための教育訓練について、通常の労働者に対して同様に実施しなければならないこととされています。
また、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、パートタイム労働者、有期雇用労働者の職務の内容、成果、意欲、能力、経験等に応じて、教育訓練を実施することが努力義務とされています。

福利厚生施設(第12条)

事業主は、通常の労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設のうち、健康の保持や業務の円滑な遂行に資するものとされる食堂、休憩室、更衣室等について、パートタイム労働者、有期雇用労働者に対しても、利用機会を提供しなければならないとされています。

通常の労働者への転換(第13条)

事業主は、通常の労働者への転換を推進するため、パートタイム労働者、有期雇用労働者について、 以下のいずれかの措置を講じなければならないとされています。

  1. 通常の労働者を募集する場合、その募集内容を既に雇っているパートタイム労働者、有期雇用労働者に周知すること
  2. 通常の労働者のポストを社内公募する場合、既に雇っているパートタイム労働者、有期雇用労働者にも応募の機会を与えること
  3. パートタイム労働者、有期雇用労働者が通常の労働者へ転換するための試験制度を設けること

なお、「短時間正社員」への転換推進措置を講ずることでも上記内容を履行したこととみなされますが、その場合は、対象者の希望に応じて、「短時間正社員」への転換後に 「正規型のフルタイムの労働者」に転換できる制度を設けることが望ましいとされています。

事業主が講ずる措置の内容等の説明(第14条)

事業主は、パートタイム労働者、有期雇用労働者を雇い入れる際に、実施する雇用管理の改善措置の内容(賃金制度の内容、教育訓練、福利厚生、正社員転換措置)について、当該労働者に説明しなければならないこととされています。また、事業主は、雇用するパートタイム労働者、有期雇用労働者から説明を求められたときは、当該労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容、理由、その待遇を決定するに当たって考慮した事項について、説明しなければならないこととされています。なお、この説明を求めたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこととされています。

説明方法は、資料を活用し、口頭で行うことが基本とされていますが、必要事項がわかりやすく記載された資料を対象者に交付することでも良いとされています。

その他(第18条、第22~25条)

同法第18条は、都道府県労働局長(厚生労働大臣から委任)は事業主に対して、報告の徴収、助言、指導、勧告等を行うことができることを定めています。前述の通り、この報告を怠る、もしくは虚偽の報告をした場合は、20万円以下の過料が課せられます(同法第30条)。

また、同法第22条は、パートタイム・有期雇用労働者から苦情の申出を受けたときは自主的に解決するよう努めなければならないことを定めています。

その他、第24~25条により、裁判によらず、法的なトラブルを解決する方法である「裁判外紛争解決手続(行政ADR)」が整備され、労使の紛争の解決を援助するため、都道府県労働局長による紛争解決援助、調停の実施が可能であることが定められています。

おわりに

この記事では『パートタイム・有期雇用労働法』について解説してきました。
パートタイム・有期雇用労働法は、正社員とパートタイム労働者、有期雇用労働者との不合理な待遇差の解消を目指すための法律であり、多様な雇用形態の従業員を雇用する、企業の人事労務担当者としては、同一労働同一賃金ガイドラインと合わせて、同法を正しく理解し、適切な対応をとることが必要となります。

【参考】
e-Gov 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律
厚生労働省 パートタイム労働者、有期雇用労働者の雇用管理の改善のために
厚生労働省 パートタイム・有期雇用労働法のあらまし
厚生労働省 パートタイム・有期雇用労働法の概要(リーフレット)
厚生労働省 同一労働同一賃金特集ページ
厚生労働省 同一労働同一賃金ガイドライン

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