【労働審判法】期日や流れや費用は?概要をわかりやすく解説

労働審判法 雇用・両立支援

こんにちは、IT企業で人事をしている労務女子なおです。
本記事では『労働審判法』に関して3分程度で概観できるよう解説します。

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労働審判法とは

労働審判法とは、個々の労働者と事業主とのトラブルが生じた際に、実情に即した迅速かつ適正な解決が図られることを目的に、裁判所による解決の手続きを定めた法律です。
同法は2006年4月に施行され、同法に基づき労働審判制度が導入されました。

労働審判制度は、地方裁判所において、労働審判官と呼ばれる裁判官1名と、労働関係に関する知識・経験を持つ専門家から選ばれる労働審判員2名の計3名で構成された労働審判委員会が、原則として3回以内の期日で審理し、適宜話合いによる解決手段である調停を試み、調停がまとまらない場合は、事案の実情に応じた解決案の提示(労働審判)が行われます。
成立した調停や確定した労働審判の内容は、裁判上の和解と同様の効力があり、強制執行を申し立てることが可能です。
労働審判に対する異議申立てがある場合には、自動的に通常の訴訟手続きへ移行することとなります。

なお、個別の労働紛争解決制度としては、同法による労働審判制度の他に、個別労働紛争解決促進法による「総合労働相談」、「助言・指導」、「あっせん」が整備されていますが、いずれも、それらの制度で解決できない場合には、最終的に民事訴訟制度により解決されます。

主な制度の比較は以下の通りです。

個別労働紛争解決制度の比較

また、労働審判法や個別労働紛争解決促進法が、あくまで“個々の労働者”と企業との間における個別労働関係紛争についての解決を図ることに対して、“労働組合”と企業との間における集団的労働紛争についての調整や救済について、労働関係調整法や労働組合法で定めています。

同法の目的は、以下の第1条に規定されています。
各法律の第1条には、その法律の目的や趣旨が定義されており、当該法律の概要を理解することに役立ちます。

【労働審判法第1条】 条文抜粋

(目的)
第一条
 この法律は、労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争(以下「個別労働関係民事紛争」という。)に関し、裁判所において、裁判官及び労働関係に関する専門的な知識経験を有する者で組織する委員会が、当事者の申立てにより、事件を審理し、調停の成立による解決の見込みがある場合にはこれを試み、その解決に至らない場合には、労働審判(個別労働関係民事紛争について当事者間の権利関係を踏まえつつ事案の実情に即した解決をするために必要な審判をいう。以下同じ。)を行う手続(以下「労働審判手続」という。)を設けることにより、紛争の実情に即した迅速、適正かつ実効的な解決を図ることを目的とする。

なお、『個別労働紛争解決促進法』、『労働関係調整法』、『労働組合法』の詳細は以下で解説しています。
 ➡ 【個別労働紛争解決促進法】あっせん?概要をわかりやすく解説
 ➡ 【労働関係調整法】同盟罷業・ストライキ?概要をわかりやすく解説
 ➡ 【労働組合法】不当労働行為、労働協約?概要をわかりやすく解説

労働審判制度の特徴・手続きの流れ・費用

労働審判法による労働審判制度は、労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争を対象とした制度です。
個別の労働関係に関する紛争の具体的な例としては、解雇や懲戒処分の効力を争うもの、賃金の請求、退職金の請求、解雇予告手当の請求、時間外手当の請求、損害賠償請求などがあります。

労働審判制度の特徴
労働審判制度の特徴は主に以下の点が挙げられます。

  • 個別労働紛争が対象
  • 裁判官に加え、労働関係の専門家である労働審判員が手続きに関与
  • 原則3回以内の期日という短期間で決着
  • 手続きは非公開
  • 和解を含む事案の実情に即した柔軟な解決
  • 成立した調停、労働審判は、裁判上の和解と同一の効力

労働審判手続きの流れ
労働審判は、多くの場合は紛争の当事者である従業員が申立て人として、申立書等の必要書類を裁判所へ提出することによって始まります。

相手方となった企業は、裁判所から期日が指定された労働審判の呼出状、申立書の写しが届くこととなります。呼出状を受け取った企業は、内容を確認の上、期日までに答弁書、証拠書類を提出し、期日に裁判所へ出頭します。第1回期日は、申立ての日から40日以内に指定されます。

期日では、双方の主張や事実関係を確認し、争点の整理を行いながら、審理手続きが進みます。原則、第2回期日までの審理にて、調停案が提示され、第3回の期日までに手続きが終了します。申立てから終了までの期間は平均して約2.5カ月となっています。

労働審判の中で示された調停案に双方が合意すれば、調停成立となり手続きが終了します。
調停が成立しない場合は、裁判所による労働審判が行われます。労働審判に不服がある場合には、2週間以内に異議申立てを行うことで、審判が失効し、自動的に通常の訴訟手続きへ移行します。
また、事案の性質上、労働審判手続きを行うことが適当でない場合も、労働審判を行わずに訴訟手続きへ移行することがあります。

費用
申立てを行う側から見た場合の労働審判にかかる費用は以下の3つとなります。

  • 収入印紙手続き費用として申立書に貼付します。請求する額に応じて異なりますが、例えば、100万円の請求を行う場合は5000円、200万円の請求を行う場合は7500円となります。
  • 郵券代裁判所から当事者へ関係書類を郵送する費用です。
  • 弁護士費用弁護士に依頼した場合に発生する費用です。紛争の内容や依頼する弁護士によって異なります。

おわりに

この記事では『労働審判法』について解説してきました。
労働審判法は、個々の労働者と事業主とのトラブルが生じた際に、裁判所にて原則3回以内の期日で審理し、解決を図るための手続きを定めた法律です。
1990年代半ば以降、労働組合と企業との間における集団的労働紛争が減少傾向にある一方で、個別労働紛争は増加傾向にある中で、2001年に成立した個別労働関係紛争解決促進法に続き、2006年に同法が施行し、労働審判制度が整備されました。企業の人事労務担当者としては、こうした制度を利用しなければならない状況を未然に防ぐ、もしくは当事者同士で適切な話し等を通じた解決を図れるに越したことはありません。一方、職場でのトラブル等を抱えた従業員の立場からすると、民事訴訟よりも短期間で終了することから、相対的に容易に選択される制度であり、同法および同制度の内容を正しく理解しておくことが必要です。

【参考】
e-Gov 労働審判法
裁判所 労働審判手続
裁判所 パンフレット「ご存じですか?労働審判制度」

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