こんにちは、IT企業で人事をしている労務女子なおです。
本記事では『労働基準法』に関して3分程度で概観できるよう解説します。
労働基準法とは
労働基準法は、労働条件に関する最低基準を定めた法律です。
1947年に制定、施行されました。
労働基準法は、日本国憲法第25条である「生存権」、「国の生存権保障義務」を基本理念とし、日本国憲法第27条2項である「勤労条件の基準」を根拠としています。
【日本国憲法第25条、第27条第2項】 条文抜粋
(生存権及び国民生活の社会的進歩向上に努める国の義務)
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。(勤労条件の基準)
第二十七条
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
日本国憲法の上記規定を踏まえ、労働者と使用者の労働関係において、労働者が経済的な弱い立場であることで不利な労働契約になるリスクがあることから、労働者保護の観点から、労働基準法によって、民法における「契約自由の原則」に最低限の基準を設けています。
労働基準法第1条には、労働条件の原則が規定されており、労働基準法の各条の解釈に当たり基本観念として常に考慮されなければならない事項とされています。
【労働基準法第1条】 条文抜粋
(労働条件の原則)
第一条 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。
② この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。
労働基準法の構成
労働基準法の各章、各条がどのように構成され、どのような事項が規定されているかの全体像を認識しておくことは、企業の人事労務担当者として、各種の実務を進めていく上で必要な基礎知識となります。
各章、各条の項目は以下の通りです。
第1章 総則
- 労働条件の原則(第1条)
- 労働条件の決定(第2条)
- 均等待遇(第3条)
- 男女同一賃金の原則(第4条)
- 強制労働の禁止(第5条)
- 中間搾取の排除(第6条)
- 公民権行使の保障(第7条)
- 定義(第9条~第12条)
第2章 労働契約
- この法律違反の契約(第13条)
- 契約期間等(第14条)
- 労働条件の明示(第15条)
- 賠償予定の禁止(第16条)
- 前借金相殺の禁止(第17条)
- 強制貯金(第18条)
- 解雇制限(第19条)
- 解雇の予告(第20条~第21条)
- 退職時等の証明(第22条)
- 金品の返還(第23条)
第3章 賃金
- 賃金の支払(第24条)
- 非常時払(第25条)
- 休業手当(第26条)
- 出来高払制の保障給(第27条)
- 最低賃金(第28条)
第4章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇
- 労働時間(第32条)
- 災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等(第33条)
- 休憩(第34条)
- 休日(第35条)
- 時間外及び休日の労働(第36条)
- 時間外、休日及び深夜の割増賃金(第37条)
- 時間計算(第38条)
- 年次有給休暇(第39条)
- 労働時間及び休憩の特例(第40条)
- 労働時間等に関する規定の適用除外(第41条)
第5章 安全及び衛生
- 労働安全衛生法(第42条)
第6章 年少者、妊産婦等
- 最低年齢(第56条)
- 年少者の証明書(第57条)
- 未成年者の労働契約(第58条~第59条)
- 労働時間及び休日(第60条)
- 深夜業(第61条)
- 危険有害業務の就業制限(第62条)
- 坑内労働の禁止(第63条)
- 帰郷旅費、坑内業務の就業制限、危険有害業務の就業制限(第64条)
- 産前産後(第65条~第66条)
- 育児時間(第67条)
- 生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置(第68条)
第7章 技能者の養成
- 徒弟の弊害排除(第69条)
- 職業訓練に関する特例(第70条~第73条)
第8章 災害補償
- 療養補償(第75条)
- 休業補償(第76条)
- 障害補償(第77条)
- 休業補償及び障害補償の例外(第78条)
- 遺族補償(第79条)
- 葬祭料(第80条)
- 打切補償(第81条)
- 分割補償(第82条)
- 補償を受ける権利(第83条)
- 他の法律との関係(第84条)
- 審査及び仲裁(第85条~第86条)
- 請負事業に関する例外(第87条)
- 補償に関する細目(第88条)
第9章 就業規則
- 作成及び届出の義務(第89条)
- 作成の手続(第90条)
- 制裁規定の制限(第91条)
- 法令及び労働協約との関係(第92条)
- 労働契約との関係(第93条)
第10章 寄宿舎
- 寄宿舎生活の自治(第94条)
- 寄宿舎生活の秩序(第95条)
- 寄宿舎の設備及び安全衛生、監督上の行政措置(第96条)
第11章 監督機関
- 監督機関の職員等(第97条)
- 労働基準主管局長等の権限(第99条)
- 女性主管局長の権限(第100条)
- 労働基準監督官の権限(第101条~第103条)
- 監督機関に対する申告、報告等(第104条)
- 労働基準監督官の義務(第105条)
第12章 雑則
- 国の援助義務(第105条の2)
- 法令等の周知義務(第106条)
- 労働者名簿(第107条)
- 賃金台帳(第108条)
- 記録の保存(第109条)
- 無料証明(第111条)
- 国及び公共団体についての適用(第112条)
- 命令の制定(第113条)
- 付加金の支払(第114条)
- 時効、経過措置(第105条)
- 適用除外(第116条)
第13章 罰則
- 第117条~第121条
附則
おわりに
この記事では、『労働基準法』について解説してきました。
労働基準法は、戦後間もない1947年に制定、施行された、労働条件に関する最低基準を定めた法律です。日本国憲法第27条を根拠として、労働者保護の観点から、民法における「契約自由の原則」に最低限の基準を設けています。
企業の人事労務担当者としては、労働基準法の各章、各条の全体像、また、各条文とその他関連法規との関係をおさえながら各種の実務を進めていく必要があります。
【参考】
e-Gov 日本国憲法
e-Gov 労働基準法