【労働施策総合推進法】パワハラ防止法?概要をわかりやすく解説

労働施策総合推進法 雇用・両立支援

こんにちは、IT企業で人事をしている労務女子なおです。
本記事では『労働施策総合推進法』に関して3分程度で概観できるよう解説します。

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労働施策総合推進法とは

労働施策総合推進法とは、労働者の職業の安定が図られるように配慮されることを基本理念とした法律です。
正式名称を「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」といい、1966年に制定され、通称「雇用対策法」と呼ばれていました。
その後、2019年に改正労働施策総合推進法が成立し、大企業では2020年6月から、中小企業では2022年4月から施行され、それ以降は通称「パワハラ防止法」や「労働施策総合推進法」と呼ばれています。 2019年の改正では、パワーハラスメントが初めて定義され、それまで規定のなかった以下のようなパワーハラスメント防止に関する条文が追加されました。通称が変わった背景はこうした内容の追加によるものです。

  • 国の施策へのハラスメント対策の明記
  • 雇用管理上の措置義務
  • 事業主への相談等を理由とした不利益取扱いの禁止
  • 国、事業主及び労働者の責務
  • 紛争解決援助・調停、措置義務等の履行確保(報告徴収、公表規定整備)

2019年の改正以降は、パワーハラスメント防止に関する法律として紹介されることが増えましたが、同法は、当初からの同法第1条の目的条文にも規定されている通り、①労働者の多様な事情に応じた雇用の安定・職業生活の充実・労働生産性の向上促進、②労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上、③経済・社会の発展・完全雇用の達成に資することを目的とした総合的な施策について規定しています。

なお、本記事では、パワーハラスメント防止に関する内容を中心に解説します。

事業主の対応に関係する内容の条文は以下の通りです。

【労働施策総合推進法第30条の2、第30条の3】 条文抜粋

(雇用管理上の措置等)
第三十条の二
 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
 事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
 厚生労働大臣は、前二項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下この条において「指針」という。)を定めるものとする。
 厚生労働大臣は、指針を定めるに当たつては、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴くものとする。
 厚生労働大臣は、指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。
 前二項の規定は、指針の変更について準用する。

(国、事業主及び労働者の責務)
第三十条の三
 国は、労働者の就業環境を害する前条第一項に規定する言動を行つてはならないことその他当該言動に起因する問題(以下この条において「優越的言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならない。
 事業主は、優越的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。
 事業主(その者が法人である場合にあつては、その役員)は、自らも、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。
 労働者は、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第一項の措置に協力するように努めなければならない。

2019年の改正時には、「女性活躍推進法」、「男女雇用機会均等法」、「育児介護休業法」も改正され、女性をはじめとする多様な労働者が活躍できる就業環境を整備するために、女性の職業生活における活躍の推進に関する一般事業主行動計画の策定義務の対象拡大、情報公表の強化、セクシュアルハラスメント等の防止対策の強化等の措置を講ずること等も規定されました。

なお、『女性活躍推進法』、『男女雇用機会均等法』の詳細は以下で解説しています。
 ➡ 【女性活躍推進法】えるぼし認定や情報公表とは?概要をわかりやすく解説
 ➡ 【男女雇用機会均等法】ハラスメント対策?概要をわかりやすく解説

事業主の対応

同法に定められている事業主の対応に関して、以下にて、企業の人事労務担当者として、適切に理解・対応を準備しておく必要のある内容について説明します。
なお、同法に違反した場合の罰則規定はありません

職場における「パワーハラスメント」とは

職場における「パワーハラスメント」とは、職場において行われる

①優越的な関係を背景とした言動であって、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③労働者の就業環境

が害されるものであり、①~③までの要素を全て満たすものをいいます。なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、該当しません。

厚生労働省は、職場におけるパワーハラスメントの状況は多様である一方で、代表的な言動の類型として、6つの類型があるとし、類型ごとに典型的にパワーハラスメントに該当する、もしくは、しないと考えられる例を提示しています。詳細は厚生労働省のパンフレット・リーフレットをご参照ください。

パワハラの3要素とパワハラの6類型

職場における「パワーハラスメント」の防止のために講ずべき措置

以下の措置を講ずることが義務とされています。

事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
① 職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
② 行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、 労働者に周知・啓発すること

相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③ 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
④ 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること

職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
⑤ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑥ 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと(事実確認ができた場合)
⑦ 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと(事実確認ができた場合)
⑧ 再発防止に向けた措置を講ずること(事実確認ができなかった場合も同様)

そのほか併せて講ずべき措置
⑨ 相談者・行為者等のプライバシー(※)を保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること
 ※ 性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含む
⑩ 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

また、事業主は、労働者が職場におけるパワーハラスメントについての相談を行ったことや雇用管理上の措置に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いをすることが、法律上禁止されています。

おわりに

この記事では『労働施策総合推進法』について解説してきました。
労働施策総合推進法は、当初1966年に制定され、通称「雇用対策法」と呼ばれていた法律ですが、2019年の法改正によりパワーハラスメントが初めて定義され、それまで規定のなかったパワーハラスメント防止に関する条文が追加され、通称も「パワハラ防止法」と呼ばれるようになりました。
企業の人事労務担当者としては、職場のパワーハラスメントをはじめ、各種のハラスメントは、ハラスメントを受けた従業員の業務遂行や活躍を阻害するだけにとどまらず、周囲を含めた職場秩序の乱れや従業員の離職、企業のレピュテーションリスクにも繋がる可能性があることを理解しながら、があることを認識し、同法を正しく理解し、必要な対応事項を適切に講じていくことが重要となります。

【参考】
e-Gov 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律
厚生労働省 職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)

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