【健康診断】企業の義務?種類と対象は?概要をわかりやすく解説

健康診断 雇用・両立支援

こんにちは、IT企業で人事をしている労務女子なおです。
本記事では『健康診断』に関して3分程度で概観できるよう解説します。

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健康診断とは

労働安全衛生法(第66条)では、事業者は、労働者に対して、医師による「健康診断」を実施しなければならないとされており、また、労働者は、事業者が行う「健康診断」を受けなければなりません。

健康診断は、労働者が作業することにより引き起こされる事故や疾病を防ぎ、または、それを早期発見し、被害の拡大を防止するために企業に実施が課せられています。

健康診断は、一般健康診断特殊健康診断の大きく2つに分かれます。

詳細は後述しますが、一般健康診断は、労働者を雇入れる際(雇入れ時の健康診断)や、1年以内ごとに1回の定期的に実施するもの(定期健康診断)や、特定の業務への配置替えの際および6カ月以内ごとに1回実施するもの(特定業務従事者の健康診断)などがあります。

また、特殊健康診断は、有害な業務に従事する労働者や従事していた労働者に実施するもの(有害業務従事中の特殊健康診断・有害業務従事後の特殊健康診断)などがあります。

健康診断の対象となる労働者については、健康診断の種類に応じて異なります。
一般的に多く労働者が対象となり得る一般健康診断のうち、「雇入れ時の健康診断」、「定期健康診断」、「特定業務従事者の健康診断」については、「常時使用する労働者」が対象となります。
この対象には、以下の①、②の両方を満たす短時間労働者も含みます。①期間の定めのない契約により使用される者であること。もしくは、期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上使用されることが予定されている者、および、1年以上使用されている者。②1週間の労働時間数がその事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分3以上であること。

健康診断の実施時間(労働時間として扱うかどうか)については、一般健康診断は、可能な限り、労働者の便宜を図り、所定労働時間内に実施すること(労働時間として扱うこと)が望ましいとされていますが、必ずしも所定労働時間内に実施しなければならないとする義務はありません
一方、特殊健康診断については、所定労働時間内に行わなければなりません(労働時間として扱わなければなりません)。

なお、健康診断の費用は、その実施義務が事業者に法で課されている以上、当然に事業者が負担することとされています。一方、法的な義務のない健康診断(例えば、実施義務のない労働者への健康診断、オプションで追加した検査、人間ドックなど)にかかる費用は個人負担とすることが可能です。

健康診断の種類

健康診断の種類は、以下の通りです。

健康診断の種類

雇入れ時の健康診断

雇入れ時の健康診断とは、事業者が労働者を雇い入れた際に実施しなければならない健康診断をさします。

なお、医師による健康診断を受けた後、3カ月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、健康診断を行わなくてもよいこととされています。

雇入れ時の健康診断の項目は以下の通りです。

  1. 既往歴及び業務歴の調査
  2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  3. 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
  4. 胸部エックス線検査
  5. 血圧の測定
  6. 貧血検査
  7. 肝機能検査
  8. 血中脂質検査
  9. 血糖検査
  10. 尿検査
  11. 心電図検査

なお、健康診断とは異なりますが、労働者(日雇い等の臨時の労働者や短時間労働者含む)の雇入れ時には、従事する業務に関する安全または衛生のための教育を行わなければなりません。実際には、研修会社への委託や、e-learningを準備することで対応している企業が多いようです。

定期健康診断

定期健康診断とは、事業者が労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期的に実施しなければならない健康診断をさします。

なお、定期健康診断の項目のうち、特定の項目とそれに応じた年齢等の基準に該当し、医師(産業医を含む)が必要でないと認めたものは省略することができます。

定期健康診断の項目は以下の通りです。

  1. 既往歴及び業務歴の調査
  2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  3. 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
  4. 胸部エックス線検査及び喀痰検査
  5. 血圧の測定
  6. 貧血検査
  7. 肝機能検査
  8. 血中脂質検査
  9. 血糖検査
  10. 尿検査
  11. 心電図検査

一見、雇入れ時の健康診断と同じに見えますが、喀痰検査の有無が異なります。

特定業務従事者の健康診断

特定業務従事者の健康診断とは、坑内労働、深夜業等の有害業務に常時従事する労働者に対して、6カ月以内ごとに1回、定期的に実施しなければならない健康診断をさします。

海外派遣労働者の健康診断

海外派遣労働者の健康診断とは、労働者を海外に6カ月以上派遣する際、もしくは、6カ月以上海外に派遣した労働者を帰国後国内業務に就かせる際に実施しなければならない健康診断をさします。

なお、6カ月以内に前述の「雇入れ時の健康診断」、「定期健康診断」、「特定業務従事者の健康診断」、後述の「有害業務従事中の特殊健康診断」、「有害業務従事後の特殊健康診断」の受けた項目に相当する項目は省略してもよいこととされています。

給食従事者の検便

給食従事者の検便とは、事業に附属する食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者に対し、雇入れの際、もしくは、その業務への配置替えの際に実施しなければならない検便による健康診断をさします。

自発的健康診断

自発的健康診断とは、6カ月を平均して1カ月あたり4回以上深夜業に従事する労働者が、事後の対応につなげてもらうことを目的に、自ら受けた健康診断の結果を事業者に提出することができる健康診断をさします。

有害業務従事中の特殊健康診断

有害業務従事中の特殊健康診断とは、一定の有害な業務に従事する労働者に対し、特別の項目について、雇入れの際、もしくは、配置替えの際に、原則6カ月以内ごとに1回、定期的に実施しなければならない健康診断をさします。

対象となる具体的な業務は以下の通りです。

  • 高気圧業務
  • 放射線業務
  • 特定化学物質業務
  • 石綿業務
  • 鉛業務
  • 四アルキル鉛業務
  • 有機溶剤業務

有害業務従事後の特殊健康診断

有害業務従事後の特殊健康診断とは、前述の有害業務従事中の特殊健康診断のうち、一定の特定化学物質業務や石綿業務に従事させたことのある労働省に対し、それらの業務に従事しなくなった場合も、特別の項目について、原則6カ月以内ごとに1回、定期的に実施しなければならない健康診断をさします。

なお、常時粉じん作業(石綿作業も含む)に従事させる労働者に対しては、じん肺法に基づく「じん肺健康診断」を定期的に実施しなければなりません。

歯科医師による健康診断

歯科医師による健康診断とは、歯科に有害な業務に従事する労働者に対し、雇入れの際、もしくは、配置替えの際に、6カ月以内ごとに1回、定期的に実施しなければならない歯科医師による健康診断をさします。

歯科に有害な業務とは、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗化水素、黄りんその他歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務をさします。

健康診断実施後の措置

事業主は、健康診断実施後、その結果を踏まえた措置や記録の作成・保管等をすることも課せられています。

医師等からの意見聴取
健康診断の結果に基づき、健康診断の項目に異常の所見のある労働者について、労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師(歯科医師による健康診断については歯科医師)の意見を聞かなければなりません。

健康診断実施後の措置
上記の医師等からの意見を勘案し必要があると認めるときは、作業の転換、労働時間の短縮等の適切な措置を講じなければなりません。

健康診断の結果の通知
健康診断の結果は、労働者に通知しなければなりません。

健康診断の結果の記録
健康診断の結果は、健康診断個人票を作成し、それぞれの健康診断によって定められた期間(原則5年間)、保存しておかなくてはなりません。

健康診断の結果の報告
常時50人以上の労働者を使用する事業者(特殊健診の結果報告書については、健診を行った全ての事業者)は、健康診断(定期のものに限る)の結果を、遅滞なく、所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。

健康診断の結果に基づく保健指導
健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要がある労働者に対し、医師や保健師による保健指導を行うよう努めなければなりません。

おわりに

この記事では、『健康診断』について解説してきました。
健康診断は、労働安全衛生法にて、労働者が作業することにより引き起こされる事故や疾病を防ぎ、または、それを早期発見し、被害の拡大を防止することを目的に、事業者に実施が課されています。健康診断の種類や対象者は、それぞれ細かく分類されているため、企業の人事労務担当者としては、それぞれの内容を理解し、その実行のための適切な体制を整備する必要があります。

【参考】
e-Gov 労働安全衛生法

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