【医師による面接指導】労働時間の把握?概要をわかりやすく解説

医師による面接指導 雇用・両立支援

こんにちは、IT企業で人事をしている労務女子なおです。
本記事では『医師による面接指導』に関して3分程度で概観できるよう解説します。

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医師による面接指導とは

医師による面接指導とは、問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて必要な指導を行うことをいいます。事業者は、脳・心臓疾患の発症を予防するため、長時間にわたる労働により疲労の蓄積した労働者に対し、医師による面接指導を行わなければならないこととされています。

これは、脳・心臓疾患(脳血管疾患および虚血性心疾患等)の発症が長時間労働との関連性が強いとする医学的知見を踏まえ、労働安全衛生法に定められているものとなります。

なお、労働安全衛生法に定められた「面接指導」には、長時間労働者を対象とする面接指導(同法第66条の8、9)と、高ストレス者を対象とする面接指導(同法第66条の10)がありますが、本記事では前者について解説します。

高ストレス者に対する面接指導の内容を含む『ストレスチェック』の詳細は以下で解説しています。
 ➡ 【ストレスチェック】企業の義務?対象は?概要をわかりやすく解説

また、面接指導やストレスチェックとは別に、企業には、事故や疾病の防止することを目的に、労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければならないとされています。その『健康診断』の詳細は以下で解説しています。
 ➡ 【健康診断】企業の義務?種類と対象は?概要をわかりやすく解説

面接指導の対象

医師による面接指導の対象は以下の労働者となります。

  1. 労働者:月80時間超の時間外・休日労働を行い、疲労の蓄積が認められる者(申出)
  2. 研究開発業務従事者:上記1.に加えて、月100時間超の時間外・休日労働を行った者
  3. 高度プロフェッショナル制度適用者:1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた時間について、月100時間を超えて行った者

なお、事業者は上記の面接指導を実施するため、労働者の労働時間の状況について、タイムカードによる記録、PC等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法によって把握しなければならないとされています(労働安全衛生法第66条の8の3、労働安全衛生規則第52条の7の3)。ここでいう労働者は、高度プロフェッショナル制度適用者を除き、裁量労働制や管理監督者を含みます。
また、労働時間の把握の方法については、前述の客観的な方法が原則であり、自己申告による始業・終業時刻の確認・記録は、あくまでその例外となります。

なお、『高度プロフェッショナル制度』の詳細は以下で解説しています。
 ➡ 【高度プロフェッショナル制度】導入企業少ない?概要をわかりやすく解説

面接指導の実施内容

面接指導は、産業医の要件を備えた医師が実施することが望ましいとされています。
面接指導の場所は、会議室などプライバシーを確保できる場所で実施することとされていますが、産業医が表情やしぐさなどを確認できること等一定の条件を満たせば、オンライン面談での実施も可能です。

面接指導においては、以下の事項について確認し、1.から「業務の過重性」を評価し、2. 3.から「疲労蓄積状況」を評価します。

  1. 当該労働者の勤務の状況
  2. 当該労働者の疲労の蓄積の状況
  3. 上記1.2.に掲げるもののほか、当該労働者の心身の状況

なお、厚生労働省が公開しているマニュアルの中で、事前問診票、面接指導報告書のフォーマットや面接指導時の会話例などを紹介しているので、そちらも参考にすると良いでしょう。

医師からの意見聴取

事業者は、面接指導の実施後、遅滞なく、労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師の意見を聴かなければなりません。
面接指導の結果の記録については、5年間の保存義務があります。記録の内容は、聴取した医師の意見を記載したものである必要があります。

面接指導実施後の就業上の措置

事業者は、医師の意見を勘案して、必要と認める場合は適切な措置を実施しなければなりません。
具体的には、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の適切な措置をとります。
また、衛生委員会(もしくは安全衛生委員会や労働時間等設定改善委員会)への意思の意見等の報告その他の適切な措置が必要となります。その場合は、個人が特定されないよう注意することが必要です。なお、衛生委員会においては、面接指導の対象者数、実施者数、事後措置に関する医師の意見等の報告を行うことで、事業場における長時間労働の状況の把握や対策に繋げている企業が多いようです。

おわりに

この記事では、『医師による面接指導』について解説してきました。
面接指導は、脳・心臓疾患(脳血管疾患および虚血性心疾患等)の発症が長時間労働との関連性が強いとする医学的知見を踏まえ、脳・心臓疾患の発症を予防するために、労働安全衛生法にて事業者に義務づけられているものです。
企業の人事労務担当者としては、従業員の労働時間を適切に把握し、面接指導のための適切な体制を整備する必要があります。

【参考】
e-Gov 労働安全衛生法
厚生労働省 安全・衛生
厚生労働省 長時間労働者、高ストレス者の面接指導に関する報告書・意見書作成マニュアル
厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」

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