【労働者派遣法】法改正の歴史?概要をわかりやすく解説

労働者派遣法 雇用・両立支援

こんにちは、IT企業で人事をしている労務女子なおです。
本記事では『労働者派遣法』に関して3分程度で概観できるよう解説します。

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労働者派遣法

労働者派遣法とは、労働者派遣事業の適正な運営と派遣労働者の雇用の安定を図るための措置を定めた法律です。
正式名称を「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」といいます。

労働者派遣法は1985年に制定され、1986年に施行されました。その後、経済・産業構造の変化や多様な働き方に対するニーズに対応するため、時代の変化にあわせて改正を繰り返し現在の内容に至ります。
直近での大きな改定としては、2015年に労働者派遣の期間制限が定められた改定、2020年に同一労働同一賃金への対応としての改定が行われています。

同法の目的は、以下の第1条に規定されています。
各法律の第1条には、その法律の目的や趣旨が定義されており、当該法律の概要を理解することに役立ちます。

【労働者派遣法第1条】 条文抜粋

(目的)
第一条 この法律は、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)と相まつて労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の保護等を図り、もつて派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする。

なお、『職業安定法』の詳細は以下で解説しています。
 ➡ 【職業安定法】労働条件等の明示義務とは?概要をわかりやすく解説

「労働者派遣」とは、以下のイメージの通り、自己の雇用する労働者を、派遣契約を締結した派遣先の指揮命令のもとに労働に従事させることをいい、職業安定法で原則禁止している労働者供給の例外として、許可を受けた労働者派遣事業に限り認められています。
蛇足ですが、派遣労働者を受け入れた企業が、その派遣労働者を別の企業に提供すること(出向含む)は労働者供給となり、禁止されています(二重派遣の禁止)。

また、派遣期間の制限や不合理な待遇差を禁止とする同一労働同一賃金の規制等が設けられています。

労働者派遣

また、労働者派遣の形態には、主に以下の3つがあります。

  • 有期雇用派遣:有期雇用の派遣労働者は、「一般派遣」とも呼ばれることがあり、一般的な労働者派遣はこの形態に該当します。有期雇用派遣では、派遣元と派遣期間に対応した期間の定めのある雇用契約を締結し、派遣期間が終了するとともに派遣元との雇用契約も終了となります。
  • 無期雇用派遣:無期雇用の派遣労働者は、派遣元と期間の定めのない雇用契約を締結し、派遣先への派遣期間が終了しても雇用関係は継続し、賃金が支払われます。安定した雇用や長期的なキャリア形成につながりやすく、2015年改正でも促進がされています。
  • 紹介予定派遣:紹介予定派遣は、派遣先企業が派遣労働者を直接雇用に切り替えることを前提としたシステムです。派遣期間が終了し、派遣先企業と派遣労働者双方の合意があった場合、直接雇用契約を締結することとなります。

労働者派遣法では、労働者派遣の期間制限を設けています。
具体的には、有期雇用の派遣労働者について、以下の通り、「事業所単位」「個人単位」の期間制限(3年)が課されています。派遣可能期間が満了した次の日のことを抵触日といい、「事業所単位」と「個人単位」でそれぞれの抵触日を越えて受け入れることはできません。

  • 事業所単位:同一の事業所における派遣労働者の継続的な受入れは3年を上限とし、それを超えて受け入れようとする場合は、過半数労働組合や労働者の過半数を代表する者からの意見聴取が必要となります。意見があった場合には対応方針等の説明が必要。
  • 個人単位:同一の派遣労働者の派遣先の同一の組織単位(課に相当)における継続的な受入れは3年が上限となります。

労働者派遣法の変遷

労働者派遣法は1986年に施行されて以降、複数の法改正を繰り返してきました。
現在の同法の内容を理解するにあたり、これまでの変化点を理解しておくことは、企業の人事労務担当者として実務を行う上でも参考になります。

主な改正のポイントをまとめると以下の通りです。

労働者派遣法の歴史

それそれの詳細は以下の通りです。

1986年 「労働者派遣法」施行
労働者派遣法は1985年に制定され、1986年に施行されました。
当初、専門的知識等を必要とする業務等の13業務を対象業務とし、施行後すぐに3業務が追加され、16業務が対象業務となりました。なお、同法が制定されるまでは、職業安定法により労働者派遣事業は労働者供給事業として禁止されていました。

1996年 対象業務を16業務から26業務へ拡大
専門性の高い業務を中心に、対象業務が16業務から26業務へ拡大されました。

1999年 対象業務が原則自由化
対象業務が原則自由化され、26業務以外も可能となりました。それまでの対象業務を指定する方式から、禁止業務を指定するネガティブリスト方式に変わりました(禁止業務:建設、港湾運送、警備、医療、物の製造など)。なお、26業務の期間は3年、新たに対象となった26業務以外の業務の期間は1年が上限とされました。

2000年 紹介予定派遣が解禁
紹介予定派遣が解禁されました。
紹介予定派遣は、前述の通り、派遣先企業が派遣労働者を直接雇用に切り替えることを前提としたシステムです。派遣期間が終了し、派遣先企業と派遣労働者双方の合意があった場合、直接雇用契約を締結することとなります。

2004年 製造派遣が解禁、派遣期間上限が3年へ延長
製造業務への労働者派遣が解禁されました。
また、26業務以外の業務の派遣期間の上限が1年から3年に延長されました。

2006年 医療派遣の一部が解禁
医療関係業務の一部への労働者派遣が解禁されました。

2007年 製造派遣期間の上限が3年へ延長
製造業務の派遣期間の上限が1年から3年に延長されました。

2012年 派遣労働者の権利保護を目的とした規制強化
派遣労働者の権利保護を目的とした以下の規制強化がされました。

  • 日雇派遣の原則禁止
  • グループ企業内派遣を8割以下に制限
  • 離職した労働者を離職後1年以内に派遣労働者として受け入れることを禁止
  • 派遣労働者の保護や待遇改善を強化(マージン率等の情報提供の義務化、無期雇用への転換推進措置の努力義務化など)
  • 労働契約申込みみなし制度の創設(施行は2015年10月)

2015年 26業務にかかわらず原則上限3年に
派遣期間規制が見直され、26業務にかかわらず、派遣先の事業所単位、派遣労働者個人単位として派遣期間の上限が3年とされました。
また、労働者派遣事業の許可制への一本化、キャリアアップ措置の義務化、雇用安定措置(3年見込みの場合は義務、1年以上3年未満の場合は努力義務)、均衡待遇が強化の改正がなされました。

2020年 「同一労働同一賃金」が求められることに
待遇差を解消するために「同一労働同一賃金」が求められることになりました。
具体的には、不合理な待遇差を解消するための規定整備がされ、派遣先の通常の労働者との「均等・均衡待遇方式」、もしくは、一定の要件を満たす「労使協定方式」による待遇の確保が義務化されました。
また、派遣労働者に対する待遇に関する説明義務の強化や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備がなされました。

2021年 教育訓練の説明義務化等(1月)、雇用安定措置の希望聴取等(4月)
2021年には1月と4月にそれぞれ改正が行われています。
1月には、派遣元は実施する教育訓練や希望者へのキャリアコンサルティングの内容についての説明が義務化されました。また、派遣元と派遣先による派遣契約書の電磁的記録を認めること、一部例外が認められている日雇い派遣の契約解除に対する休業手当の支払い、派遣労働者からの苦情処理について派遣先も対応することの義務化の改正が行われました。
4月には、派遣元は雇用安定措置の希望聴取をし、その内容を派遣元管理台帳に記載することが必要であること、派遣元から派遣先へ提供すべき情報(マージン率を含む紹介料・派遣料を含む情報)をインターネット等の方法で常に開示することが義務付けられました。

おわりに

この記事では『労働者派遣法』について解説してきました。
労働者派遣法は、労働者派遣事業の適正な運営と派遣労働者の雇用の安定を図るための措置を定めた法律となり、派遣労働者を受け入れる上で基本的かつ重要な内容が記載されています。
本記事でも紹介した通り、労働者派遣法は度々法改正がなされており、多様な人的リソースの活用を考える企業の人事労務担当者としては、同法を正しく理解し、適切な対応をとることが必要となります。


【参考】
e-Gov 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
厚生労働省 労働者派遣事業・職業紹介事業・募集情報等提供事業等
厚生労働省 派遣労働者の同一労働同一賃金について

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