【年少者・児童】労働基準法の適用は?概要をわかりやすく解説

年少者・児童の労働 勤務・働き方

こんにちは、IT企業で人事をしている労務女子なおです。
本記事では『未成年・年少者・児童の労働』に関して3分程度で概観できるよう解説します。

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未成年・年少者・児童の労働とは

未成年者・年少者の雇用や労働条件については、健康・福祉確保等の観点から労働基準法等の保護規定が設けられています
具体的には、満15歳に達した日以後の最初の3月31日(15歳到達の年度末)が終了するまでの児童については、原則、労働者として使用することを禁止しています。
また、満18歳に満たない年少者についても、一定の労働制限が設けられています。

上記に関しては、労働基準法の第6章(第56条~第64条)に規定があります。
なお、児童労働については、国際労働機関(ILO)の条約や国連の「子どもの権利条約」などの国際条約で禁止されています。ILOは、児童労働を、15歳未満の労働、および、18歳未満の危険で有害な労働と定義しており、日本の労働基準法もこの定義に沿ったものとなっています。

未成年・年少者・児童の定義については、それぞれ以下の通りです。

未成年
満18歳に達しない者(満17歳以下)を指します。

成年年齢については、長年、民法において満20歳と定められていましたが、2022年4月1日よりから18歳へ変更されました。
民法が定める成年年齢には、「一人で契約をすることができる年齢」、「父母の親権に服さなくなる年齢」の意味があります。つまり、成年年齢に達すると、親の同意を得ずとも、自分の意思で様々な契約ができるようになります。
なお、この民法改正に先立ち、2016年6月から公職選挙法の選挙権年齢も満18歳、2018年6月から憲法改正国民投票の投票権年齢も満18歳へと変更されています。

一方、健康、非行防止、青少年保護等の観点から、飲酒、喫煙、競馬などの公営競技に関する年齢制限は、20歳が維持されています。

年少者
満18歳に達しない者(満17歳以下)を指します。

児童
満15歳に達しない者(満15歳に達した日以後最初の3月31日が終了するまでの者)を指します。

未成年・年少者・児童

保護規定

未成年・年少者・児童の定義、保護規定

未成年

未成年の労働契約
親権者や後見人が、未成年者に代わって労働契約を締結することは禁止されています(労働基準法第58条1項)。
ただし、法定代理人の同意は必要となります。これは民法上の法律行為に関する規定によります。

一方、未成年者が締結した労働契約が、本人にとって不利と認められる場合には、親権者、後見人、または、所轄労働基準監督署長は、その労働契約を解除することができます(労働基準法第58条2項)。

未成年の賃金請求権
未成年者は、独立して賃金を請求することができます。一方、親権者や後見人が、代わりに受け取ることはできません(労働基準法第59条)。
民法上は、親権者による未成年者の賃金の代理受領が認められていますが、親権の濫用防止の観点から、賃金直接払いの原則(労働基準法第24条)に加えて、上記(労働基準法59条)の規定が設けられています。

年少者・児童

満18歳に満たない年少者については、一定の労働制限が設けられています。

最低年齢の原則
満15歳に達した日以後の最初の3月31日(15歳到達の年度末)が終了するまでの児童については、原則、労働者として使用することを禁止しています。

ただし、例外として、以下の要件を満たした場合には、満13歳以上の児童を使用することができます。

① 非工業的業種
② 健康、福祉に有害ではない
③ 労働が軽易である
④ 修学時間外に使用する
⑤ 所轄労働基準監督署長の許可を得る

上記に加えて、映画の製作または演劇の事業(いわゆる子役など)は、満13歳に満たない児童も同様の要件を満たすことで使用することができます。

危険有害業務の就業制限・坑内労働の禁止
年少者については、一定の危険な業務や厚生労働省令で定める重量物を取り扱う業務、有害な原料等を取り扱う業務、有害ガス等を発散する場所等における業務、その他安全、衛生、福祉に有害な場所における業務に就かせることはできません(労働基準法62条)。

また、年少者については、坑内での労働を禁止しています。具体的には、鉱山の採掘、トンネル工事などが該当しますが、事務作業等の業務であっても坑内での労働に就かせることはできません。

年少者の証明書
年少者を使用する場合には、「戸籍証明書」を事業場に備え付けなければならないとされています。また、児童を使用する場合には、「戸籍証明書」に加えて、修学に支障がないことを証明する「学校長の証明書」、「親権者、または、後見人の同意書」も事業場に備え付けておかなければならないとされています(労働基準法57条)。

年少者の労働時間等
年少者については、「変形労働時間制(フレックスタイム制含む)」、「高度プロフェッショナル制度」の規定は適用されません。また、36協定による「時間外労働・休日労働」の規定も同様に適用されません。

なお、通常の変形労働時間制は適用されませんが、例外として、1週間の労働時間が40時間を超えない範囲内で、1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮する場合において、他の1日の労働時間を10時間まで延長することができます。
また、1週間で48時間、1日で8時間を超えない範囲内において、1カ月単位の変形労働時間制、または、1年単位の変形労働時間制の適用が可能となります。
つまり、通常の変形労働時間制は適用できませんが、上記年少者用の変形労働時間制の適用は認められていることになります。

年少者の深夜業(午後10時~午前5時までの労働)について、使用してはならないとされています。また、児童については、午後8時~午前5時の使用が禁止されています。なお、演技を業務の場合は、午後9時から午前6時となります。
年少者の深夜業の労働については、以下のケースを例外として深夜業が認められています。

  • 交代制によって使用される満16歳以上の男性
  • 農林の事業、畜産・養蚕・水産の事業、保健衛生の事業、電話交換の業務

おわりに

この記事では『未成年・年少者・児童の労働』について解説してきました。
未成年者・年少者の雇用や労働条件については、健康・福祉確保等の観点から労働基準法等の保護規定が設けられており、若い労働力を必要とし、年少者を雇用しようとする企業の人事労務担当者としては、各種の保護規定を正しく理解し、適切に対応することが重要となります。


なお、若者の雇用促進の法律である『若者雇用促進法』の詳細は以下で解説しています。
 ➡ 【若者雇用促進法】ユースエール認定とは?概要をわかりやすく解説

【参考】
e-Gov 労働基準法

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