こんにちは、IT企業で人事をしている労務女子なおです。
本記事では『障害者基本法』に関して3分程度で概観できるよう解説します。
障害者基本法とは
障害者基本法とは、障害者の自立・社会参加の支援等の施策を推進することを目的に、その基本原則を定め、国、地方公共団体等の責務を明らかにした法律です。
1960年代までの障害者に関する諸施策の基本的な考え方を示す「心身障害者対策基本法」が1970年に成立し、同法が1993年に改正され、「障害者基本法」が成立しました。その後、2004年、2011年に改正が行われています。
同法の目的は、以下の条文の通り、第1条に規定されています。
各法律の第1条には、その法律の目的や趣旨が定義されており、当該法律の概要を理解することに役立ちます。
【障害者基本法第1条】 条文抜粋
(目的)
第一条 この法律は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのつとり、全ての国民が、障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本原則を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めること等により、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。
同法では、障害者の定義を、身体障害、知的障害、精神障害、その他心身の機能障害があるため、継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受ける者としています。
同法における基本的な施策に関しては、以下の項目が定められています。
- 医療、介護等(第14条)
- 年金(第15条)
- 教育(第16条)
- 療育(第17条)
- 職業相談(第18条)
- 雇用の促進(第19条)
- 住宅の確保(第20条)
- 公共的施設のバリアフリー化(第21条)
- 情報の利用におけるバリアフリー化(第22条)
- 相談(第23条)
- 経済的負担の軽減(第24条)
- 文化的諸条件の整備(第25条)
また、同法に基づき、毎年12月3日から12月9日までの1週間を「障害者週間」としています。
この期間は、国民の間に広く障害者の福祉についての関心と理解を深めるとともに、障害者が社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に積極的に参加する意欲を高めることを目的として、国、地方公共団体、関係団体等が、様々な意識啓発の取組を展開しています。
事業主の対応
同法は、主に国、地方公共団体等の責務を明らかにした法律ですが、事業主の対応についても、雇用に関して定められた内容があります。
具体的な条文は以下の通りです。
【障害者基本法第19条】 条文抜粋
(雇用の促進等)
第十九条 国及び地方公共団体は、国及び地方公共団体並びに事業者における障害者の雇用を促進するため、障害者の優先雇用その他の施策を講じなければならない。
2 事業主は、障害者の雇用に関し、その有する能力を正当に評価し、適切な雇用の機会を確保するとともに、個々の障害者の特性に応じた適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るよう努めなければならない。
3 国及び地方公共団体は、障害者を雇用する事業主に対して、障害者の雇用のための経済的負担を軽減し、もつてその雇用の促進及び継続を図るため、障害者が雇用されるのに伴い必要となる施設又は設備の整備等に要する費用の助成その他必要な施策を講じなければならない。
その他の障害者に関する法律
障害者基本法は、障害者の自立・社会参加の支援等の施策を推進することを目的に、その基本原則を定めていますが、それ以外にも、障害者に関する法律は複数存在します。
特に、企業の人事労務担当者としては、障害者雇用の観点から、障害者基本法以外に以下のような法律についても理解しておく必要があります。
- 障害者雇用促進法(正式名称:障害者の雇用の促進等に関する法律)
- 障害者差別解消法(正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)
障害者雇用の観点とは直接的に異なりますが、上記以外にも障害者に関する法律がありますので、ご参考までに以下にご紹介します。
- 身体障害者福祉法
- 知的障害者福祉法
- 精神保健福祉法(正式名称:精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)
- 障害者総合支援法(正式名称:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)
- 障害者虐待防止法(正式名称:障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律)
- 障害者優先調達推進法(正式名称:国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律)
なお、『障害者雇用促進法』、『障害者差別解消法』の詳細は以下で解説しています。
➡ 【障害者雇用促進法】雇用義務、法定雇用率とは?概要をわかりやすく解説
➡ 【障害者差別解消法】合理的配慮の提供義務化?概要をわかりやすく解説
おわりに
この記事では『障害者基本法』について解説してきました。
障害者基本法は、主に国、地方公共団体等の責務を明らかにした法律ですが、多様な従業員を雇用する企業の人事労務担当者としては、その他の障害者雇用に関連する法律と合わせて、同法を正しく理解し、適切に対応することが重要となります。
【参考】
e-Gov 障害者基本法
内閣府 障害者施策