【年次有給休暇】年5日の取得義務とは?概要をわかりやすく解説

年次有給休暇 勤務・働き方

こんにちは、IT企業で人事をしている労務女子なおです。
本記事では『年次有給休暇』に関して、3分程度で概観できるよう解説します。

スポンサーリンク

年次有給休暇とは

年次有給休暇とは、労働者の心身のリフレッシュを図ることを目的として、労働義務のある日に賃金の支払いを受けてお休みを取れる制度をいいます。
一般的に、「年休」、「有給」等と呼ばれています。

年次有給休暇については、労働基準法第39条に付与の対象、要件等について定められています。

【労働基準法第39条】 条文一部抜粋

(年次有給休暇)
第三十九条
 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

なお、働かなくて良い日という点で「休日」と混合されてしまうことがありますが、休日は、労働契約において、もともと労働義務がない日のことを指しますので、労働義務がある日に有給でお休みを取得する年次有給休暇とは異なるものとなります。

なお、『休日』の詳細は以下で解説しています。
 ➡ 【休日】 労働基準法における定義や法定休日とは?概要をわかりやすく解説

年次有給休暇は上記の通り労働基準法で定められている法定休暇ということになりますが、法定休暇には、年次有給休暇の他に、産前産後休業、生理休暇、育児休業、子の看護休暇、介護休暇、介護休業などがあります。

また、法定休暇以外に法定外の休暇(特別休暇ともいいます)があります。
法定外の休暇は、企業が任意で設けている休暇のことをいい、年次有給休暇等の法定休暇とは別に、慶弔関連の休暇や病気の際に取得できる休暇や両立支援を目的とした休暇を設けている企業もあります。
なお、法定外の休暇(特別休暇)の詳細は以下で解説しています。
 ➡ 【特別休暇】休暇の種類や法定休日との違いは?概要をわかりやすく解説

発生要件

年次有給休暇は、正社員やパートタイム労働者など関係なく、以下の要件を満たしている場合に必ず付与しなければなりません。

  • 6カ月間継続して雇用されている
  • 全労働日の8割以上を出勤している

労働者が雇入れ日から6カ月間継続勤務していることが1つ目の要件となります。
加えて、全労働日の8割以上を出勤することも2つ目の要件となります。
なお、この出勤率の算定にあたって、業務上の怪我や病気で休む期間、法律上の育児や介護により休業している期間については、出勤したものとみなして取り扱うことになります。
また、会社都合の休業期間は、全労働日から除外することになります。

付与日数

通常の労働者については、雇入れ日から6カ月間継続勤務した時点で10日の年次有給休暇を付与しなければなりません。
その後、以下の通り、継続勤務年数に応じた日数を付与していく必要があります。
一方、パートタイム労働者やアルバイトのように、週所定労働時間が30時間未満、かつ、週所定労働日数が4日以下、または、年間の所定労働日数が216日以下の労働者については、所定労働日数に応じて比例付与されることになります。

年次有給休暇の付与日数

上記はあくまで労働基準法で定められた最低限付与しなければならない日数となるため、企業の判断で、雇入れ日から年次有給休暇を付与することや、上記の日数よりも多い日数を付与することは問題ありません。

取得時季

年次有給休暇は、労働者が指定する時季に与えなければなりません(時季指定権)。
ただし、労働者の指定した日に年次有給休暇を 与えると、事業の正常な運営が妨げられる場合は、使用者に休暇日を変更する権利(時季変更権)が認められています。

この時季変更権については、例えば、同じ日に多くの労働者が同時に休暇取得を希望し、事業運営が継続できない場合などが想定されていますが、業務の繫忙感だけを理由とする場合には認められないことに留意が必要です。

時季変更権を巡っては、退職前に年休を消化するケースが課題として取り上げられることがあります。
上述の考え方に則り、退職予定者が、付与された残りの年次有給休暇を退職予定日までの全期間において取得したいと申し出てきた場合、企業としては原則としてそれを認めなければなりません。
十分な業務の引き継ぎができなかったりする事態を避けるためには、急な退職の申出を避けることや引き継ぎに協力をしてもらえるようなコミュニケーションを図っておくこと、年次有給休暇の買い上げの仕組み検討も必要な対応となり得ます。

なお、年次有給休暇の買い上げについては、買い上げによって労働者が請求し得る日数を減じることや与えないことは違反である一方、結果的に未消化の日数に応じて手当を支給することは違反ではない、とする行政解釈がありますので、その点は留意しておくう必要があります。

請求権の時効

年次有給休暇は、発生の日から2年間で時効を迎え、消滅することとなります(労働基準法第115条)。
前年に取得されなかった日数分については、翌年までは与える必要があります。

企業によっては、この2年の時効を迎えて失効した年次有給休暇を積み立てて、病気等、一定のルールに基づいて取得を認める制度を設けている事例もあります。

半日単位

年次有給休暇は、その趣旨からも1日単位で取得することが原則とされています。
一方、労働者が半日単位での取得を希望し、使用者が同意した場合であれば、半日単位で年次有給休暇を与えることが可能となります。
半日単位での取得を認めることとする場合には、その旨就業規則に定めておく必要があります。

時間単位

労働者が時間単位での取得を希望した場合、使用者は以下の内容を規定した労使協定を締結することで、年5日を限度として、時間単位で年次有給休暇を与えることが可能となります。

【労使協定で定める内容】
① 時間単位年休の対象労働者の範囲
② 時間単位年休の日数
③ 時間単位年休1日の時間数
④ 1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数

年5日の取得義務

2019年4月施行の働き方改革関連法により、年5日以上の年次有給休暇の取得が義務化されました。
労働者の立場から「年5日の取得義務」と表現されることがある一方で、厚生労働省等のウェブページ上は、使用者の立場から「年5日の時季指定義務」と表現されています。
この年5日の時季指定を実施するためには、対象となる労働者の範囲、および、時季指定の方法等について、就業規則に記載しなければなりません。


対象者
年5日の取得義務について、具体的には、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年5日について、使用者が時季を指定して取得させることが必要となります。
対象には、管理監督者や有期雇用の労働者も含まれます。
また、更には、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に該当する年度途中の休職予定者、復職者、退職予定者についても対象となる点は注意が必要です。

また、使用者は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければならない点もあわせて注意が必要です。

期間とカウント
年5日の期間については、年次有給休暇を付与した日を基準日として、そこから1年以内に5日を取得させなければならないということになります。
なお、この5日のカウントには、半日単位の取得について、0.5日として含めることが可能ですが、時間単位の取得分や、企業が任意で設けている法定外の有給休暇(特別休暇)は含めることができません。

罰則
この年5日の取得義務に違反した場合、使用者は以下の罰則を科される可能性があります。
罰則については、対象労働者1人につき1罰として扱われます。
実際には、違反が発覚した場合即時にこれらの罰則が科されるのではなく、労働基準監督署による指導、それを踏まえた改善を図っていくこととされています。

  • 年5日の取得義務に違反した場合:30万円以下の罰金
  • 時季指定に関して就業規則に規定していない場合:30万円以下の罰金
  • 従業員の希望する時季に所定の年次有給休暇を与えなかった場合:6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金


時季指定を行う方法
年10日以上の年次有給休暇を付与された社員が、自然と年次有給休暇を5日以上消化することが当たり前のような組織においては、従来通りの運用を続けることで問題ないですが、1人でも年5日取得をしない従業員がいる場合や、その可能性がある場合には、適切な形で取得を促すことが必須となります。
その方法としては、主に以下の方法が考えられます。

(1)使用者からの時季指定を行う
基準日から半年後など、一定期間が経過したタイミングで、年次有給休暇の取得日数が5日未満の労働者に対して、使用者から時季指定をすることや、過去の年次有給休暇の取得実績が少ない労働者に対して、基準日の時点で、あらかじめ使用者から時季指定をすること等が考えられます。

(2)計画的付与制度を利用する
年次有給休暇の付与日数のうち、5日を超える部分については、労使協定を締結することによって、使用者が、計画的に休暇取得日を割り振ることが可能です。

【労使協定で定める内容】
① 計画的付与の対象者
② 対象となる年次有給休暇の日数
③ 計画的付与の具体的な方法
④ 年次有給休暇の付与日数が少ない者の扱い
⑤ 計画的付与日の変更

従来からあるこの手法を活用することで、使用者としては、労務管理が容易になることに加え、労働者としても、計画が立てやすいメリットがあります。
年5日の取得義務が開始されて以降、この制度を活用する企業もいるようです。

おわりに

この記事では『年次有給休暇』について解説してきました。
多くの従業員が何気なく使用している「年次有給休暇」も、企業の人事労務担当者としては、付与等に関する各種の取り扱いや5日の取得義務について、正しく理解する必要があります。
年次有給休暇については、労働時間とあわせて、従業員の健康管理に大きく影響を与える重要な労働条件となりますので、会社のビジネスや業務内容を踏まえながら、適切な勤怠管理を行うことが重要となります。

【参考】
e-Gov 労働基準法
厚生労働省 労働時間・休日
厚生労働省 年次有給休暇取得促進特設サイト
厚生労働省 年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説

タイトルとURLをコピーしました