こんにちは、IT企業で人事をしている労務女子なおです。
本記事では『労働組合法』に関して3分程度で概観できるよう解説します。
労働組合法とは
労働組合法とは、日本国憲法28条で認めている労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)を保障するための法律です。
具体的には、労働組合の結成、不当労働行為、労働協約、労働委員会の機能などについて規定しています。同法は、「労組法」と略されることもあります。
労働組合法は、労働基準法、労働関係調整法と並び、労働者保護を目的とする基本法である「労働三法」の1つと呼ばれています。労働基準法が個別的労働関係法の1つであることに対して、労働組合法は、集団的労働関係法の1つとなります。
現在の労働組合法は、戦後の1945年12月に制定された旧労働組合法を、1949年6月に全面改正され、施行されました。
なお、労働基準法の制定は1947年4月、労働関係調整法の制定は1946年9月であり、いずれも戦後間もない頃に制定された法律です。
その後、2005年1月に約55年ぶりの改正が行われ、労働委員会における不当労働行為事件の審査手続及び体制整備等を内容とする改正が行われました。
同法の目的は、以下の第1条に規定されています。
各法律の第1条には、その法律の目的や趣旨が定義されており、当該法律の概要を理解することに役立ちます。
【労働組合法第1条】 条文抜粋
(目的)
第一条 この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的とする。2 刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十五条の規定は、労働組合の団体交渉その他の行為であつて前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。但し、いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。
なお、公務員などの労働三権に関しては別途特別法が設けられており、一部取扱いが異なります。
また、『労働関係調整法』の詳細は以下で解説しています。
➡ 【労働関係調整法】同盟罷業・ストライキ?概要をわかりやすく解説
労働組合の定義
労働組合法は、「労働組合」を「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体」と定義しています。
また、同法における「労働者」は、「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」と定義しており、労働基準法の第9条に「使用される者」との表現のある定義と異なり、より広範なものと考えられることが一般的です。
労働組合は、2名以上が集まれば、行政機関の認可や届出等の手続きを要することなく結成することが可能ですが、労働組合法の定める不当労働行為の救済などの適用を受けるためには、その都度、厚生労働省の労働委員会の資格審査を受ける必要があります。
なお、これらの資格要件を満たした労働組合のことを「法適合組合」と呼びます。
資格審査のための具体的な要件は以下の通りです。
下記1~3は同法第2条、下記4は同法第5条に定義された内容となります。
- 主体性:労働者が主体となって組織されていること
- 自主性:以下の要件を満たし、労働者が自主的に組織していること
- 使用者の利益を代表する者が参加していないこと
- 使用者から経理上の援助等を受けていないこと
- 共済事業、福利事業のみを目的としていないこと
- 主として政治運動、社会運動を目的としていないこと
- 目的:労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的とした組織であること
- 規約:以下の事項を記載した規約を定めること
- 名称
- 主たる事務所の所在地
- 組合員が、組合のすべての問題に参与する権利及び均等の取扱いを受ける権利を有すること
- 人種、宗教、性別、門地又は身分による組合員資格が奪われないこと
- 組合役員が直接無記名投票で選挙されること
- 総会が少なくとも毎年1回開催されること
- 有資格者である会計監査人による会計報告が少なくとも毎年1回組合員へ公表されること
- 同盟罷業(ストライキ)が直接無記名投票の過半数により決定されること
- 規約の改正は直接無記名投票の過半数により支持を要すること
なお、労働組合法上の上記要件を満たさない「法不適合組合」であった場合も、労働組合法上の不当労働行為の救済などの保障が与えられないだけであり、日本国憲法第28条によって、労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)が認められていることに変わりはなく、慎重かつ適切に対応する必要があります。
労働組合には、大きく以下の4つの種類があります。
- 企業別組合:日本で一般的な個別の企業毎に結成された労働組合
- 産業別組合:同一産業に属する労働者が加入する横断的な労働組合
- 職業別組合:同一職種に属する労働者が加入する広域的な労働組合
- 合同労組・ユニオン:企業別組合に加入できない労働者等が加入できる広域的な労働組合
不当労働行為
労働組合法では、第7条にて、使用者による労働組合や労働者に対する以下の行為を「不当労働行為」として禁止しています。不当労働行為を受けた労働組合や労働者は、労働委員会に対して救済申立てを行うことができます。
不利益な取扱い
組合員であることを理由とする不利益な取扱いは不当労働行為となります。具体的には、労働組合への加入、労働組合の結成又は労働組合の正当な行為を理由とする解雇、賃金・昇格の差別等が該当します。また、労働組合に加入しないこと、または、労働組合から脱退することを雇用条件とすることも不当労働行為となります。なお、労働組合の組合員であることを雇用条件とするユニオンショップ協定は不当労働行為にはなりません。
団体交渉の拒否
労働組合から団体交渉を申し込まれた場合に、正当な理由なく団体交渉を拒否することは不当労働行為となります。例えば、当該企業で働く労働者以外の者が団体交渉を申し込んできた労働組合に加入していることを理由として団体交渉を拒否することも不当労働行為となります。また、労働組合の要求に応えることまでが義務とはなりませんが、形式的に団体交渉に応じるに留まり、実質的に誠実な交渉を行わないこと(不誠実団交)も不当労働行為とみなされます。
支配介入
労働組合の運営等に対する支配介入や経費援助は不当労働行為となります。具体的には、労働組合結成に対する阻止・妨害行為、組合員に脱退を勧める行為、労働組合の日常の運営や争議行為に対する干渉を行うことや、労働組合の運営経費に経理上の援助を与えることは不当労働行為となります。
報復的行為
労働委員会への申立て等を理由とする不利益な取扱いは不当労働行為となります。
労働協約
労働組合法は、労働組合に対し、使用者との間で「労働協約」を締結する権能を認めています。
労働協約とは、労働組合と使用者との間で、労働条件等について、双方の記名押印等がある書面で作成された場合にその効力が発生するものであり、この労働協約に違反する労働契約や就業規則の部分は無効とされ、無効となった部分は当該労働協約の定めるところによる。
労働協約は、原則として、労働協約の締結当事者である使用者、労働組合及びその組合員のみに適用されるものですが、労働組合法第17条は、その例外を定めており、1つの事業場の4分の3以上の労働者を組織する労働組合が締結した労働協約は、少数の非組合員にも拡張適用されることとされています。これを一般的拘束力と言います。
おわりに
この記事では『労働組合法』について解説してきました。
労働組合法は、日本国憲法で認めている労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)を保障し、労働組合の結成、不当労働行為、労働協約、労働委員会の機能などについて規定した法律です。日本においては、企業別組合が一般的であり、昨今では協調的な労働組合など良好な労使関係を築いている企業も多くなっている状況ですが、企業の人事労務担当者としては、こうした労使関係の基礎となる労働組合法を正しく理解し、今後な労使関係の維持や不測の事態等状況の変化に備えた対応が必要になります。
【参考】
e-Gov 労働組合法
厚生労働省 労働組合