【職業安定法】労働条件等の明示義務とは?概要をわかりやすく解説

雇用・両立支援

こんにちは、IT企業で人事をしている労務女子なおです。
本記事では『職業安定法』に関して、3分程度で概観できるよう解説します。

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職業安定法とは

職業安定法とは、労働市場における求人や職業紹介に関する基本的な事項を定めた法律です。
具体的には、公共職業安定所(愛称:ハローワーク)の職業紹介、民間事業者による有料・無料の職業紹介事業(いわゆる人材紹介サービス)、労働者の募集等に関して規定しています。「職安法」と略されることもあります。

同法は、1947年に施行され、働き方の多様化、求人詐欺の問題、求人メディア等の多様化など、時代の変化に合わせて複数の改正を経ており、2022年10月に改正法が施行され、更に2024年4月にも改正法が施行されます。

職業安定法は、以下の条文の通り、その目的に沿った内容が規定されており、その主体は、職業紹介に携わる官民の当事者の内容と、求人元の企業の内容と、複数に渡ります。
各法律の第1条には、その法律の目的や趣旨が定義されており、当該法律の概要を理解することに役立ちます。

【職業安定法第1条】 条文抜粋

(法律の目的)
第一条
 この法律は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)と相まつて、公共に奉仕する公共職業安定所その他の職業安定機関が関係行政庁又は関係団体の協力を得て職業紹介事業等を行うこと、職業安定機関以外の者の行う職業紹介事業等が労働力の需要供給の適正かつ円滑な調整に果たすべき役割に鑑みその適正な運営を確保すること等により、各人にその有する能力に適合する職業に就く機会を与え、及び産業に必要な労働力を充足し、もつて職業の安定を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。

企業の人事労務担当としては、職業安定法で規定されている主な以下の内容の中でも、特に求人元の企業が留意すべき事項である上2つについて理解し、適切に対応する必要があります。

  • 募集時の労働条件等の明示
  • 個人情報の取扱い
  • 政府・行政の役割
  • 職業紹介事業や募集の委託に関する許可
  • 上記事業の報酬
  • 違反時の罰則など

企業が求人を出す際には、後述する最低限明示が必要な労働条件等が定められています。
また、求職者の個人情報を収集する際には、業務の目的を明示し、必要な範囲で個人情報を収集・使用・保管する必要があります。

万が一、職業安定法に違反した場合には、その違反内容に応じて、最も重いもので「1年以上10年以下の懲役、または20万円以上300万円以下の罰金」、軽いもので「30万円以下の罰金」となり得ます。

労働条件等の明示義務

最低限明示しなければならない労働条件等

企業が求人を出す際には、最低限以下の労働条件等の明示が必要となります。
後半の 6.試用期間に関する項目から 14.派遣労働者に関する項目は、2018年1月に施行された改正法にて追加・明確化されました。
また、最後の 15.受動喫煙防止措置の状況は、2020年4月から追加されています。

  1. 業務内容
  2. 契約期間
  3. 就業場所
  4. 就業時間
  5. 休憩時間
  6. 休日
  7. 時間外労働
  8. 賃金
  9. 加入保険
  10. 試用期間がある場合はその旨と、試用期間中の賃金
  11. 裁量労働制の場合はその旨と、具体的な条件
  12. 固定残業代の場合、基本給・手当の額・割増賃金に関する規定など
  13. 募集者の氏名・名称
  14. 派遣労働者の募集である場合はその旨
  15. 受動喫煙防止措置の状況

上記項目の記載例は、厚生労働省が公表しているリーフレットに記載があります。
また、2022年10月からは、上記に加え、求人等に関する情報の的確な表示が義務付けられました。
具体的には、求人情報や自社に関する情報の的確な表示が義務付けられ、虚偽の表示・誤解を生じさせる表示が禁止され、求人情報を正確・最新の内容に保つことが求められます。

更に2024年4月からは、以下の事項についても明示が必要になります。

  1. 従事すべき業務の変更の範囲
  2. 就業の場所の変更の範囲
  3. 有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間又は更新回数の上限を含む)

労働条件の明示が必要なタイミング

前述の労働条件等については、以下のタイミングで明示が必要になります。

  • ハローワークや自社HP等で労働者を募集する時
  • 労働契約締結時
  • 労働条件に変更があった時

当初明示した労働条件が変更される場合は、変更内容について明示しなければなりません。
変更明示は、求職者等が変更内容を適切に理解できるような方法で行う必要があります。
具体的には、当初明示した内容と変更後の内容が対照できる方法、変更箇所に下線を引いたり着色したりする方法、脚注をつける方法があります。
なお、新卒者に対しては、特に配慮が必要であることから、変更を行うことは不適切とされています。

労働条件明示に当たって遵守すべき事項

労働条件の明示に当たっては、職業安定法に基づく指針等を遵守することが必要です。
主に以下の事項に留意しなければなりません。

  • 明示する労働条件は、虚偽又は誇大な内容としてはならない
  • 有期労働契約が試用期間としての性質を持つ場合、試用期間となる有期労働契約期間中 の労働条件を明示しなければならない
  • 試用期間と本採用が1つの労働契約であっても、試用期間中の労働条件が本採用後の労働条件と異なる場合は、試用期間中と本採用後のそれぞれの労働条件を明示しなければならない
  • 労働条件の水準・範囲等を可能な限り限定するよう配慮が必要
  • 労働条件・職場環境は、可能な限り具体的かつ詳細に明示するよう配慮が必要
  • 明示する労働条件が変更される可能性がある場合はその旨を明示し、実際に変更された場合は速やかに知らせるよう配慮が必要

なお、職業安定法における上記の労働条件等の明示義務とは異なるものとして、雇い入れ時(入社時)においても労働条件の明示が必要となりますので、こちらも対応を忘れることのないよう注意が必要です。
入社時の労働条件の明示については、労働基準法第15条第1項を根拠としたものです。
明記が義務付けられている絶対的明示事項と、口頭通知でも可とされている相対的明示事項があります。
この書面については、労働条件通知書と呼ばれ、そのひな形は厚生労働省ホームページに掲載されています。

おわりに

この記事では『職業安定法』について解説してきました。
職業安定法は、度々法改正が行われていますが、職業紹介に携わる官民の当事者に関する内容と、求人元の企業に関する内容と、複数に渡っています。そのため、企業の人事労務担当者としては、求人元の企業にとって必要な内容を正しく理解の上で適切な対応が求められます。
また、仮に今後も何らかの法改正がある場合も同様に、全ての改正内容が直ちに直接的な具体的対応を求められるものとは限らないため、混合せず、正しく同法を理解し、適切な対応をすることが重要です。

【参考】
e-Gov 職業安定法
厚生労働省 職業紹介事業に係る法令・指針
厚生労働省 令和4年職業安定法の改正について

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